中国逃走容疑者、コロナが包囲 「行く場所ない」出頭相次ぐ

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

 【北京・川原田健雄】中国で殺人事件などを起こして逃走した容疑者の逮捕が相次いでいる。中国当局は新型コロナウイルスの感染対策として外出や移動を制限し、身分確認も徹底。逃げ場を失った容疑者が次々と見つかり、中国メディアによると逮捕者は千人を超えた。一方、監視強化が習近平指導部に批判的な人権活動家らの抑圧につながっているとの指摘もある。

 「もう耐えられない。自首する」。中国紙は2月中旬、強盗事件を起こした男が20年ぶりに出頭したと報じた。男は1995年に貴州省で銃や爆薬を使って金を強奪。強盗罪などで懲役9年の実刑判決を受けたが、2000年に脱走した。

 男はアルバイトをしながら各地を転々としてきたが、感染が拡大した1月下旬以降、状況が一変。団地の身元確認が厳しくなったため、身分証のない男は部屋を借りられず、仕事もできなくなった。約1カ月、排水溝の中や橋の下で暮らした末に警察へ駆け込んだ。

 98年に強盗殺人事件を起こした後、逃亡生活を続けてきた吉林省出身の男も貴州省で出頭した。感染拡大を防ごうと警察だけでなく、住民も相互監視を強化。団地の住民登録が徹底され、不審者はすぐに通報されるため、男は「毎日おびえていた。もう行く場所がなかった」と明かした。

 偽の身分が見破られた例もある。33年前に弟を殺害した四川省出身の男は、別の男性を装って新疆ウイグル自治区で暮らしていたが、今月初めの防疫検査で、所持する身分証が既に死亡した男性のものだと判明。警察に逮捕された。

 中国メディアの紅星新聞は感染防止に向けた管理強化に伴い、浙江省で678人、江蘇省で481人、安徽省で452人が逮捕されるなど各地で逃亡者の摘発が相次いだと報じた。殺人など重大事件の容疑者は60人に上り、うち20人は20年以上逃げていた。

 思わぬ効果を上げた厳しい感染対策は、当局にとって都合の悪い言論の封殺にも威力を発揮している。

 人権活動家の許志永氏は昨年12月、福建省で人権派弁護士らと市民社会について話し合う集会に参加。その後、国家転覆を謀ったとして当局が参加者を次々と拘束したため、広東省の弁護士の元に身を寄せていたが、2月15日に感染予防名目で訪れた当局者に拘束された。今も当局の指定施設で監視下に置かれている。

 他にも、湖北省武漢市の実態を伝えてきた市民記者が「強制隔離」されるなど、感染対策を口実にした拘束が続く。中国の人権問題に詳しい東大大学院の阿古智子准教授は「監視が強化され、人の動きが当局に伝わりやすくなった。人権やプライバシーが軽視され、文化大革命時のように密告が横行しかねない状況だ」と指摘した。

PR

国際 アクセスランキング

PR

注目のテーマ