検事長定年延長 支離滅裂の決定を見直せ

西日本新聞 オピニオン面

 無理なつじつま合わせの連鎖が招いた異常な事態と言えるのではないか。ボタンを掛け違えたのなら当然、最初に戻って掛け直すのが筋であろう。

 黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題のことだ。検事総長への起用を視野に首相官邸が検察幹部人事に介入したのではないか、と野党は追及している。

 森雅子法相は9日の参院予算委員会で「東日本大震災の時、検察官は福島県いわき市から最初に逃げた」などと答弁した。11日に野党が「発言内容は事実か」とただすと、法相は「個人の見解で、不適当だった」と認めた。国会が空転し、安倍晋三首相が法相に対して異例の厳重注意をする一幕もあった。

 法相の唐突な発言は「なぜ、検察官も定年延長できるように法解釈を変えたのか」という質問に対する答弁で飛び出した。法相は「社会情勢の変化」を挙げ、「例えば」と切り出したのが問題の答弁だった。もはや支離滅裂というほかない。

 政府が東京高検検事長の定年延長を閣議決定したのは1月末のことだ。検察庁法で検察官の定年は63歳(検事総長のみ65歳)と定められているのに、なぜ黒川氏に限って延長したのか。法相は当初「重大かつ複雑、困難な事件の捜査・公判に対応するため」としていた。

 ところが、国家公務員法の定年延長は検察官には適用されない-という1981年の人事院の国会答弁を野党が突き付けると、首相はその後「今般、国家公務員法の解釈を変更した」とこれまた唐突に認めた。

 すると、従来の解釈を引き継いでいると明言していた人事院の給与局長は答弁修正を余儀なくされ、「つい言い間違えた」と釈明した。苦し紛れの言い訳としか聞こえない。

 看過できないのは国会答弁が二転三転しているのに、政府が国家公務員の定年を段階的に65歳へ引き上げる国家公務員法改正案と一緒に、検察官の定年を65歳にする検察庁法改正案も国会へ提出したことだ。

 この改正案の事前審査で自民党総務会はいったん了承を見送った。東京高検検事長の定年を延長した閣議決定に関し「三権分立を脅かす」「官邸の人事介入だ」など異論が出たという。 その後の総務会で政府が「黒川氏の人事とリンクしていない」と説明し、了承されたが、程度の差こそあれ、野党と同様の懸念や問題意識が与党の一部にもあるという証左だろう。

 14~16日に実施した共同通信社の世論調査で東京高検検事長の定年延長に「納得できない」との回答は6割を超えた。民意を踏まえ、混乱の発端である閣議決定を見直すべきである。

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