安倍首相、解散戦略にコロナの影 しぼむ「年内」論

西日本新聞 総合面 河合 仁志

 新型コロナウイルスの感染拡大で、衆院解散を巡る安倍晋三首相のシナリオが視界不良に陥っている。当初は東京五輪成功の余勢を駆って年内に打って出るとの見方があったが、そうした戦略は崩壊寸前。五輪開催だけでなく感染の終息や経済情勢も見通せず、これまで多用した「サプライズ解散」も事実上封じられかねない。

 感染が拡大するまでは、夏の東京五輪・パラリンピック後、「首相はどんな選択肢も取り得る」(周辺)とされてきた。9月中に内閣改造と党役員人事を行い、自らの手で解散。次の解散までの猶予を十分に確保した上で、意中の岸田文雄政調会長に禅譲する-。政界ではこうしたシナリオが有力視されていた。

 衆院議員の任期満了は来年10月21日。時機を逸すれば「追い込まれ解散」になりかねないだけに、政府関係者は「年内解散は固い」とみていた。一方で首相が五輪を花道に退陣し、岸田氏に禅譲するとの見方も根強くささやかれていた。

 だが肝心の五輪の行方が不透明になった。開催が延期になれば仕切り直しの態勢づくりは混乱必至。経済的な打撃も避けられない。そもそも感染が終息しなければ解散できる環境は整わず、年内をにらんだ解散戦略は根底から崩れることになる。

 来年以降もタイミングが難しい。五輪が1年延期なら、年前半の解散は開催に万全を期すべき時期に政治空白をつくることになりかねない。首相の自民党総裁としての任期は来年9月まで。五輪が2年延期なら「総裁4選」も浮上しそうだが、自民党内には「あと2年、首相の気力が持つのかどうか」との声もある。

 2012年の第2次政権発足後、首相は2度解散を断行した。いずれも野党の意表を突く「サプライズ解散」で与党が圧勝。だが感染の終息と経済への影響が見通せない中ではそうした戦略も封じられ、政局の先行きは不透明感を増す。 (河合仁志)

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