「海の正倉院」と呼ばれる福岡県宗像市の世界文化遺産「沖ノ島」…

西日本新聞 オピニオン面

 「海の正倉院」と呼ばれる福岡県宗像市の世界文化遺産「沖ノ島」。大陸や朝鮮半島から伝わったとみられる「宝物」が残る。古代の交流史を解き明かす貴重な史料として、出土した約8万点はすべて国宝に指定されている

▼このうち、由来がはっきりしなかったガラス製品が、ササン朝(226~651年)のメソポタミア(現在のイラク)で作られたと科学的に証明された

▼「カットグラス碗(わん)片」と糸を通す穴が開いた「ガラス製切子玉」だ。薄い緑色の美しいガラス片を見ると、はるか昔、はるか遠い中東で、切り込み細工や彫刻が施されたグラスに赤い葡萄(ぶどう)酒を注ぐ人々の姿がしのばれる

▼古来、人と人の交流は、素晴らしい文物や知識、文化をもたらし、交易によって暮らしを豊かにしてきた。ご先祖たちが苦難を重ねた旅も、あっという間にできる現代なのに、世界共通の「宝物」である人の往来が途絶えつつある

▼新型コロナの感染拡大で、他国からの入国を制限する動きが世界中に広まっている。中国以外の地域の感染者数が、中国を上回り、「地球規模の健康危機」となったからだ

▼出入国だけでなく、国内での外出まで禁じる国も。経済への悪影響も計り知れない。鎖国の時代か戦時中のような不自由と息苦しさに、いつまで耐えられようか。「忍耐は幸福の鍵である」。沖ノ島のガラス製品が生まれた中東にはこんなことわざもあるけれど。

PR

春秋(オピニオン) アクセスランキング

PR

注目のテーマ