地方の地価回復 先行きには警戒が必要だ

西日本新聞 オピニオン面

 地価の回復傾向が地方都市にも広がってきた。中心部の再開発と訪日外国人客の増加が地価押し上げの大きな要因だ。

 だが、その前提は揺らいでいる。新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の混乱は長期化する恐れがあり、地価の先行きには警戒が必要だ。

 国土交通省が発表した公示地価(1月1日時点)は、全国平均で商業地が5年連続、住宅地が3年連続で上昇した。上昇率は年々拡大しており、上昇基調が強まっている。

 東京、大阪、名古屋の三大都市圏を除く地方圏も傾向は同じで、商業地は3年連続、住宅地は2年連続で上昇した。

 注目したいのは上昇幅が大きい主要4市(札幌、仙台、広島、福岡)を除く地方圏でも、商業地が28年ぶりに上昇に転じ、住宅地は1996年から25年続いた下落にストップがかかった点だ。回復傾向が地方に広がってきたのは朗報だろう。

 地価の動きについて国交省は「個別地点の利便性、収益性を反映したもので、実需に基づく実体経済を反映した上昇」と分析する。東京・銀座の最高値がバブル期を上回る一方、その近くにはバブル期のピークの3割に満たない地点もある。地価が全体的に底上げされたバブル期とは異なる現実がある。

 地方でも、熊本市や長崎市のような駅や中心部の大型再開発による周辺の地価上昇が目につく。ただ利便性や収益性が1年で2割、3割も高まるとは考えにくい。世界的な「カネ余り」で資金が日本の不動産市場にも流れ込んでいるのは確かだ。

 東京は不動産価格が上がり、投資としての運用利回りが低下した。割安感のある地方で投資物件を探す動きが広がり、福岡市中心部で外資が買い手となる売買も成立しているという。

 福岡市では観光客向けのホテルとオフィスの需要が地価上昇のけん引役だった。ところが最近、ホテルの増加で客室稼働率は前年割れが続き、新たな投資の動きは鈍ってきた。現状は、天神や博多駅周辺の再開発絡みで需給が逼迫(ひっぱく)するオフィス需要が地価の上昇を支えている。

 日韓関係の悪化で昨年半ばから韓国人訪日客が激減し、九州の観光地は打撃を受けた。韓国人客に人気だった佐賀県嬉野市や長崎県対馬市は地価にも悪影響が出ている。新型コロナ問題が長引けば、九州経済を支えてきた外国人客の消費が期待できず、地価への影響も避けられない。業績の悪化した企業がコスト削減を進め、オフィスの実需が落ち込む心配もある。

 「バブルは崩壊して、初めてバブルと分かる」との警句もある。万全の注意を怠れない。

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