激怒した大竹からの相談に「俺も一緒に辞めるよ」発端は貴明への暴力

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(38)

 私が初めて1年間(1986~87年)、1人で台本を書き通したTBSの「爆笑・一ッ気族!」は山田邦子と大竹まことが中心の公開コメディー。2人とも私の台本を気に入ってくれ、毎週楽しそうに演じていました。そんな作家と演者の良好な関係を見ていたプロデューサーの桂邦彦さんから新しい仕事を頼まれました。「特番を作るから構成やってくれよ。司会は邦子と大竹にやらせるから」と。

 その特番は、若手芸人を競わせる演芸番組。審査員に作家の野坂昭如さんがキャスティングされていると知り、一抹の不安がよぎりました。ちょっと前に放送されたとんねるず出演の「オールナイトフジ」(フジテレビ)という番組で、酒に酔った野坂さんが石橋貴明を平手打ちする事件があり、そのことに大竹が怒っているのを知っていたからです。

 本番当日のスタジオで不安は的中。セットの陰で大竹が相談してきたのです。「野坂に絡むよ。けんかになってもいいかな」

 私は野坂さんに好感を持っていました。「アメリカひじき」や「火垂るの墓」を愛読していましたし、体験に裏打ちされた反戦思想と反骨精神には学ぶべきものがある。そう思っていましたが、酔って出演した揚げ句、何も悪くない貴明に暴力はいけません。私は大竹に言いました。「いいよ。問題になったら俺も一緒にこの番組を辞めるよ」

 いざ本番。野坂さんが若手芸人の評価を下している最中に、大竹は「あんた、小説を書いているかもしれないけど、笑いが分かるのかよ。なんだ、偉そうに」と宣戦布告。怒った野坂さんも立ち上がり、大竹に向かいます。殴り合いになりそうなところで邦子や桂さんが止めに入りました。

 結局、互いに謝る格好で収まりましたが、この場面はお蔵入り、私も辞めることはありませんでした。

 大竹は笑いのセンスがあり、私の台本を喜々として演じ、時には好き勝手にアドリブを盛り込んでいました。そんな彼のけんか未遂事件は義憤に駆られた結果です。今も活躍する彼は、どこか厭世(えんせい)的な印象を持たれるでしょうが、道理に合わないことには意見する熱い男です。

 一連の騒動を落ち着かせたのは桂さん。私の台本を「面白い」と認めてくれた方です。TBSバラエティーの顔的存在でしたが、外れの番組も多かったなあ。でも大ヒットした番組が一つだけありました。

(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

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 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年07月31日時点のものです

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