「戦うトランプ」巧妙な演出 衰えぬ人気の理由、集会で探る

西日本新聞 田中 伸幸

政敵罵倒×公約固執×ユーモア=熱狂

 米大統領選を11月に控え、新型コロナウイルスへの対応も含めて厳しい批判にさらされるトランプ大統領。だが、どんな苦境に立っても支持者の熱狂は冷めない。「なぜ人気が衰えないのか?」。西日本新聞あなたの特命取材班にもそんな疑問が複数寄せられた。答えを探るためトランプ氏の演説会場に足を運ぶと、国論を二分する政治課題でも掲げた公約を断行する“忠実さ”を前面に押し出し、トランプ氏に託せば「米国はもっと良くなる」との期待をかき立てる巧妙な人心掌握術が垣間見えた。

 2月末の夜、南部サウスカロライナ州で開かれたトランプ氏の支持者集会の会場前には長蛇の列ができていた。「演台近くに場所を確保して一緒の写真に納まりたい」と意気込む男性など前日や早朝から並んだ人も含め1万3千人収容の会場は満員。1月の中西部アイオワ州の集会では会場からあふれた数百人が氷点下の寒さをものともせず屋外モニターの前に陣取った。

 「米国を偉大なままに」と書かれた無数のカードがあふれる会場に「打ち砕く」「マッチョ(男らしい)」と連呼する曲が大音量で鳴り始めた。野党民主党など政敵と激しく戦うトランプ氏を印象づける演出だ。会場の熱気が高まる中、テーマ曲「神は米国を祝福する」とともにトランプ氏が登場。会場は総立ちで興奮状態に包まれた。

演説のパターン化

 支持者集会でのトランプ氏の演説は1時間半前後。毎回、「史上最悪の大統領ハラスメントを受けている」と訴えて民主党や米主要メディアを執拗(しつよう)に批判し、彼らの嫌がらせに屈せずに2016年の大統領選で掲げた約束を守ったと自賛する。その繰り返しだ。

 不法入国の外国人を「エイリアン」と呼び、主要公約であるメキシコとの国境の壁建設に抵抗する民主党を「国民を脅威にさらす過激な左翼」とののしるのも定番だ。ウクライナ疑惑を巡る弾劾の危機を乗り越えた最近では、いまも根強い人気があるオバマ前大統領をやり玉に挙げ、公約の医療保険制度改革をその通り実現できなかったとして「うそつきは弾劾すべきだ」と敵意をむき出しにする。

 憎悪をあおる中に笑いも交ぜる。民主党の大統領候補指名を争うバイデン前副大統領に失言や勘違いが多いことをやゆして「寝ぼけたジョー(バイデン氏の名前)」とあざけると会場は沸く。支持者の白人男性(52)は「トランプ氏が政敵に付けるあだ名はどれも的確で痛快だ」と大喜びだ。

 2月末の集会では「大統領選の相手はジョーとバーニー(サンダース上院議員)のどちらがいいか」と壇上から尋ねて即席の世論調査を行い、盛り上がった。

 トランプ氏の品位を欠く発言を嫌う支持者ももちろんいる。だが、会場に駆けつけるほど熱心な聴衆は「反トランプの既存政治家はきれい事ばかりで何もしない。やっつけてほしい」(黒人男性)と、実業界から政界に転じたトランプ氏の「奮闘」に喝采を送る。

 集会の最中に感動して涙を流す人もいる。1月下旬に首都ワシントンであった女性向け集会で、トランプ氏は「全ての子は家族に愛と喜びをもたらす」と述べ、人工妊娠中絶反対の約束を貫いていると強調した。「正しいと信じることを恐れずに言い、実行する姿に勇気づけられた」。こう語る南部出身の白人女性(21)は涙をぬぐった。

「最高はこれから」

 「景気は明らかに上向いた。大統領を変える理由なんて全くない」。サウスカロライナ州で運送業を営む男性社長(45)はそう言い切った。会場はトランプ氏への信頼感であふれ、再選を期する「あと4年」コールが頻繁にこだまする。

 そんな思いに応えるようにトランプ氏は1期目の「成果」を支持者の心に刷り込むように重ねて訴える。新規雇用の創出や失業率の低下、不法移民の国外追放。「絵空事と思われた『宇宙軍』を発足させた」と胸を張り「火星に国旗を掲げる世界初の国になる」と大衆受けする「アメリカン ドリーム」も織り込む。

 民主党に政権を奪われれば成果や夢は失われ、銃規制反対や中絶反対といった保守層の価値観が損なわれると危機感をあおるのも常とう手段だ。客席から民主党に対するブーイングが起き、トランプ氏が「私たちは偉大な仕事をして米国を立て直し、かつてないほど繁栄している」と切り返して「USA」コールがこだまする。

 演説の終盤はトランプ氏の決めぜりふの数々を支持者が声をそろえて絶叫する場面が続く。「米国第一」「勝って勝って勝ちまくる」。そして最後は前回大統領選から掲げる「米国を再び偉大にする」の大合唱。

 再選支持を呼び掛ける最近の集会ではこの言葉が大人気だ。「The best is yet to come」(最高の状態はこれからやってくる)

 「トランプこそ私の大統領だ」。高揚して会場を後にする人たちからは「任期延長を認めて2024年もトランプだ」「長女のイバンカ氏に後を継いでほしい」と“長期政権”の待望論が相次いだ。

 

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