即戦力確保に7ヵ月 実習生受け入れ企業の期待と懸念

西日本新聞 社会面 古川 幸太郎 竹次 稔

進まぬ開国~特定技能導入1年(中)

 「やすりの めづまりを ふせぐには やすりに あぶらを ぬります」

 3月2日。北九州市若松区の鋼材加工会社、松木産業。インドネシア人のリキさん(26)が作業服姿で、後輩の技能実習生たちを指導していた。仕事の合間の30分間。先生役も板についてきた。

 リキさんは2年前、3年間の技能実習期間を終えて帰国。昨年4月に特定技能が創設されたのを受け、松木友哉社長(45)がジャワ島を訪ねて今年1月に呼び戻した。

 特定技能の資格を取得するための手続きに7カ月も要した。煩雑な書類審査にてこずったためだ。受け入れ窓口となるはずだった付き合いのある監理団体に支援を断られ、登録支援機関も自分で見つけるしかなかった。

 思わぬ壁を乗り越えてこぎ着けたリキさんとの再会。「日本人の若者は定着しない。外国人の即戦力を確保し続ける好循環を生み出す」。松木社長は期待を膨らませる。

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 技能実習生は昨年10月までの1年間で7万5千人増え、38万人を超えた。在留資格別では九州6県を含む全国29道県でトップ。特定技能の低調な運用とは裏腹に、企業間で奪い合いが起きるほど存在感が高まっている。

 「特定技能は仲介のうまみがない」。技能実習の受け入れ団体の関係者が明かす。受け入れ先が直接雇用できる特定技能に移行すれば、毎月数万円の「管理料」が入らなくなるからだ。

 送り出す側にとっても技能実習が好都合だという。ミャンマーの送り出し機関幹部は「試験なしで送り出すことができ、安く雇える技能実習の方が働く側も雇う側も使い勝手がいい」と断言する。

 ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で、来日を見送る技能実習生も相次いでいる。国内の労働現場は「実習生なしでは成り立たない」(関係者)のが実情。人手不足が一段と深刻化する懸念が強まっている。

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 昇降機製造会社の大澤工業(富山市)は、ベトナムから元技能実習生を呼び寄せ、昨年6月にいち早く特定技能として採用した。そのニュースは会員制交流サイト(SNS)を通じてアジアを駆け巡った。

 「私を雇ってください」「日本に戻りたいです」-。大沢恒寛専務(46)のSNSには、ベトナムや中国の元技能実習生から採用を求める声が相次いで寄せられた。その中から新たに2人の特定技能を採用。今や30人超の従業員のうち11人を外国人が占める。

 今年1月には、技能実習生を受け入れる組合と人材紹介会社をそれぞれ設立した。特定技能に限らず、技能実習や高度人材も含め幅広い在留資格の人材を確保し、ニーズに合わせて地域に循環させる仕組みを目指す。

 優秀な人材の争奪戦は国家間でも激化している。大沢専務は「アジアの若者から『日本もある』と選んでもらえるよう、地方に貢献したい」と夢を描く。

(古川幸太郎、竹次稔)

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