実習生の定住見据え家族支援 過疎地域、県境越えて連携

西日本新聞 社会面 古川 幸太郎

進まぬ開国~特定技能導入1年(下)

 もうすぐ家族と一緒になれる-。日本海に面する人口1万4千人の鳥取県北栄町。インドネシア人の介護福祉士ロシダさん(29)と准看護師ルーさん(32)は、夫や息子たちとの再会を待ち望んでいた。

 2人が働く社会医療法人、仁厚会は今回、初めて外国人を受け入れた。人手不足が深刻な介護業界では人材の争奪戦が厳しい。

 そこで打ち出したのが家族の呼び寄せ支援策だった。在留資格申請、渡航費補助、家賃全額補助、夫の仕事あっせん、日本語指導、子どもの保育園…。その手厚さは「日本人と同等かそれ以上」(同会)だ。

 4月からは県内の医療専門学校と提携し、留学生をアルバイトとして受け入れ、介護士に育成する計画。担当者は「『数』だけなら特定技能が効率的だが、早い段階から人材を育てることで『質』をさらに高めたい」と戦略を語る。

 鳥取の方言も覚え始めた2人は「まさか私たちの町より田舎だとは思わなかったけど、田舎の方が好き」と楽しげ。将来の定住も考ているという。

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 鹿児島県北部の山あいにある人口2万人のさつま町。南米から日系人約30人が移り住み、自動車部品工場で働いている。

 人材派遣会社のアバンセコーポレーション(愛知県一宮市)が就労をあっせんした。この30年で延べ6万人を全国に送り出した実績を誇る日系2世の島田英治社長(58)は「私たちは日系人のおかげで成長できた。その恩返しがしたい」と熱く語る。

 同社では現地に社員を常駐させ、住宅あっせん、病院の付き添い、ごみの分別指導まで暮らしをサポートしている。日系人たちが地域に溶け込むのを後押しする狙いだ。

 行政も動き始めた。さつま町は、将来の子どもの就学を見据え、日本語指導に当たる職員を小学校に配置する計画。英語やポルトガル語の防災マップも配信する。町の担当者は「まだまだこれから。定住人口を増やしたい」と意気込む。

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 外国人労働者を支援しようと、県境を越えた連携も始まっている。

 日系人の集住地域が多い岐阜、愛知、三重の東海地方3県のNPO法人など12団体が手を結び、連絡組織「外国人支援・多文化共生ネット」を設立。名古屋出入国在留管理局も協力する全国初の取り組みだ。

 「現場の声を届け、国を動かす存在になる」。ネットの代表を務めるNPO法人「愛伝舎」(三重県鈴鹿市)の坂本久海子理事長(58)は力を込める。

 早速、昨年末に政策提言をまとめた。外国人の暮らしを支援する多文化共生コーディネーターの育成など14項目。縦割りで腰が重くなりがちな行政を動かしたい考えだ。

 坂本氏は、外国人が生活しやすい環境を整えることの重要性を強調する。「まずは外国人が安心して働けて暮らせるセーフティーネットが必要。選ばれる地域になるのはそれからだ」

(古川幸太郎)

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