かつて勤務したタイは多くの日系企業が進出し、人と物の交差点だった…

西日本新聞 オピニオン面

 かつて勤務したタイは多くの日系企業が進出し、人と物の交差点だった。メディアもしかり。東南アジア各地に駐在する記者たちが行き交った

▼社会主義国で働く他社の記者がいた。タイに出てくる機会には有志で酒席を囲んだ。現地の最新事情を得る貴重な機会であるが、対価も要する。「常に監視されている感じ。飲んでても全然酔えない」と、まず愚痴をたっぷり聞くことになる

▼取材に不可欠の記者証の更新は、特に苦労が多いと言う。当局への申請時には書いた記事の提出が必要。反政府的内容と目されると、数日で済む手続きを何週間も待たされることになる。無言の、けれどあからさまな嫌がらせだろう

▼米国と中国の間では「国際嫌がらせ合戦」になっている。中国は、米主要紙の記者を排除する策に出たそうだ。年内で期限が切れる記者証を、前倒しして今月中に返還せよと命じた。嫌がらせも度が過ぎる

▼中国メディアの人数を制限した米側への報復措置だという。「自由に行動するメディアでなく中国の宣伝機関の一部」。米政府が国営メディアを批判して泥仕合になった

▼独裁国家や専横的な指導者が、自由な報道を忌み嫌うのは世の常。加えて今は、批判を受け止める度量あるリーダーが減ってもいるようだ。翻って日本。あるNGOの調査で昨年の「報道の自由度」は世界67位。火事は対岸のように見えて、思うほど人ごとではない。

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