坊さんのハニーハント【坊さんのナムい話・8】

西日本新聞 くらし面

 春分、秋分の日と前後3日をお彼岸といいます。これらの時期は比較的過ごしやすく、仏事を行うには最適で、昔から墓参りや寺参りをする風習があります。

 私が住職を務める寺には、境内から少し離れた場所に古い墓地があります。管理費などを頂かない代わりに、維持管理は各自にお任せしています。何かトラブルなどがあったときは、墓地の使用者同士で話し合って解決してもらっています。最近は使用者が分からない墓地も増えていて、その場合は寺側ができる範囲で管理しています。

 ある墓地の使用者から「隣の墓にハチが飛び回っている」と訴えがありました。誰がお世話しているのか分からないお墓でした。急いで現場に駆け付けたところ、墓の周りを無数のミツバチが忙しそうにぶんぶん飛んでいました。

 駆除して殺生するのも忍びないし、さて、どうしたものか…。途方に暮れる私を助けてくれたのは、SNS(会員制交流サイト)でした。状況を書き込むと、投稿を見た人からミツバチの“引っ越し”をしてくれる養蜂家を紹介してもらいました。

 養蜂家と一緒にお墓を開けてみると、墓石の隙間から入り込んだミツバチが、納骨室いっぱいに巣を作っていたのです。結局、3キロにもなる巨大な巣が採れました。巣は養蜂家に引き取ってもらい、後日精製された蜂蜜の瓶が寺に届きました。無駄な殺生をすることもなく、おいしい蜂蜜も頂いて一件落着となりました。

 養蜂家いわく、これほど立派なハチの巣ができるには2、3年かかるそうです。ずいぶんと長い間、誰も墓を訪れていなかったことになります。

 家族関係の希薄化などを背景に、無縁墓や墓じまいの話をよく耳にするようになりました。これも時代の流れとしては、仕方のないことかもしれません。

 ですが、死者とのつながりは命のつながりです。それを感じることは、自分の命が自分だけのものではなく、尊いものだと確認する作業でもあります。時代が変わっても、そのことは忘れないでほしいです。

  (永明寺住職・松崎智海 北九州市)

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