4選の蒲島知事「3期12年の評価」 7万票減「得票率では誤差の範囲」

西日本新聞 熊本版 壇 知里 和田 剛

 熊本県政初の4選から一夜明けた23日、蒲島郁夫知事(73)は県職員に拍手で迎えられて登庁した。対立候補の2倍を上回る43万票余りを獲得したことに触れ「3期12年の評価がダブルスコアにつながった。皆さんのおかげ」と笑顔であいさつした。

 県内で新型コロナウイルスの感染者が相次いだのを受け「公務に専念する」と宣言し、選挙期間中に街頭演説や集会を全く行わなかった蒲島氏。この日の記者会見では、2016年の前回選挙に比べて、自身の得票が7万票近く減ったことについて「(得票率では)誤差の範囲」。投票率が45・03%に下がったことには「思ったより高かった」と語った。

 一方、知事選の争点となった熊本空港アクセス鉄道の建設計画について、鉄道・運輸機構による調査結果が19日に届いていたと明らかにし、「本年度内に公表する方向で精査中」と述べた。県は総事業費380億円と見積もるが、県議会でも上振れの可能性が指摘されており、「選挙を通して一定の批判があることも分かった。さらに議論するため、全速力で結果を議会に示したい」と強調した。 (壇知里)

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弱者の視点忘れずに

 農業研修生として渡った米国で政治学に目覚め、東大教授から知事に転身。県政初の4期目をかけた選挙にも完勝し、蒲島郁夫氏の異色の「成功物語」に新たな一ページが加わった。

 新型コロナウイルスへの不安が広がる中、夢を語る蒲島氏の明るさや、県PRキャラクター「くまモン」を成功させた柔らかなイメージが、県民に受け入れられた結果だろう。

 「(得票差が)ダブルスコアで高い支持を得た。世論調査でも3期12年の県政が90%の高い評価を得た」。蒲島氏は23日の記者会見で手応えを語った。若い日の蒲島氏の夢は、牧場主と政治家と小説家だったという。会見では、夢を次々と実現してきた自信と高揚感が伝わってきた。

 県政担当記者として、蒲島氏の努力と前向きさに感銘を受ける一方、あえて苦言を述べたい。

 熊本地裁がハンセン病患者の家族の差別被害を認めた昨年6月の判決について所感を尋ねた際、蒲島氏は「偏見差別は深刻と直感的に分かるが、コメントは控えたい」と答えた。後日、国が控訴断念を発表した後に支持するコメントを出したが、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園がある県として、国に遠慮せず意見を明らかにするべきではなかったか。

 蒲島氏が「高校で220人中200番台の落ちこぼれだったが知事になれた」と半生を振り返る言葉がある。スタート地点を低く例え、成功を際立たせる言い回しだが、200番より下の「もっと落ちこぼれ」の同級生の気持ちも想像してもらえたらと思う。

 東大教授時代に蒲島氏が書いた自伝「運命」では、不況で解雇された人や大学入試に失敗した人について「逆境にあるほど可能性にチャレンジできるという意味で幸せではないか」と記している。県政トップとしては、逆境を乗り越えられない弱い人がいる現実も認めた目配りが求められる。

 今回の勝利では、自民党の組織力が果たした役割が大きい。蒲島氏には、高度成長期に自民党を支持した農村の保守性が、政治の安定に寄与したとの研究がある。その後の自社連立政権や小泉純一郎政権など、権力の変遷も分析している。

 政府、与党との調和を重視し熊本地震の復興予算を獲得してきた蒲島氏。権力の現実を知る政治学者ならではの手腕を生かしつつ、公約の「県民の総幸福量の最大化」実現に向けて、弱者を置き去りにしない視点も大切にしてほしい。 (和田剛)

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