面会制限でも「会いたい」 厳戒の高齢者施設、家族や入所者不安続く

西日本新聞 筑豊版 座親 伸吾

 新型コロナウイルス感染拡大が続くなか、高齢者施設の多くが面会制限を実施するなど「厳戒態勢」で対応に当たっている。基礎疾患が多い高齢者は「重症化リスクが高い」(厚生労働省)とされる。感染が発生して閉鎖となれば、利用者への支援が続けられなくなる。取材に応じてくれた家族や施設関係者は、苦悩しながら危機を乗り越えようとしていた。

 福岡県飯塚市長尾にある特別養護老人ホーム「筑穂桜の園」。同市北古賀の古賀康治さん(78)は入所する母親の清美さん(103)と面会するため毎日昼と夕、施設に通っていた。母の要介護度は最も重い「5」。認知症があり、会話はできない。

 ペーストや液状の食べ物を口に運び、時折、声をかける。滞在は30分ほど。食事介助は施設職員の仕事だが「できる限り自分でしたい」(古賀さん)。親子で過ごせる時間は、決して多くないと自覚する。

 2月20日、福岡市で九州初となる感染者が確認されると、施設は3日後から面会を制限。5分程度であれば、玄関ホールで面会を認めているが、古賀さんは「自分は買い物にも病院にも行く。ウイルスを持ち込むかもしれないから」と、来訪をやめた。

 制限解除の見通しは立たず、施設職員から時々もらう電話連絡で、安否を確認している。「もう少し収まったら、遠くで顔だけでも見ようと思う。(会うことができれば)顔、手を触ってあげたい」

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 高齢者を預かる施設側も神経をとがらせる。

 「筑穂桜の園」に入所している30人の中には胃ろうなどの処置を受けている人もいる。職員は毎日、ドアノブや手すり、歩行器、車いすなどを消毒液で念入りに拭く。ボランティアによるお話会や抹茶立て、花見などの外出行事は全て中止にした。

 中嶋香寿美施設長は「入所者から『会いたい』『家族はどげんしよるやろうか』との声をよく聞く。ストレスがたまっていると思うが、(面会制限は)命を守るため」と話す。

 特養や有料老人ホームなどの「入所型」と異なり、デイサービスなど「通所型」の介護施設も深刻だ。通所型は利用者の出入りが頻繁で、入所型よりもリスクが高いとされる。少なくとも愛知、兵庫、千葉の通所型施設で集団感染が発生した。

 厚労省は、通所や短期入所型施設での感染拡大を防ぐため、都道府県などが感染発生施設以外の施設にも休業要請できるとしている。閉鎖されればお年寄りがサービスを利用できなくなるだけでなく、影響は家族にも及ぶ。

 飯塚市内のある高齢介護関係者は「入所型施設は面会制限しても経営に影響ないが、通所型施設は閉めれば介護報酬が入らない。今は普段と運営は変わらないが、地域で感染者が出れば状況は一気に厳しくなる」と話す。利用者、家族、事業者、それぞれの不安と苦悩が続く。 (座親伸吾)

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