「孫に会えない」高齢者、自粛にため息の春 施設は面会禁止1カ月

西日本新聞 社会面 吉田 真紀

 新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、重症化しやすい高齢者は外出の自粛を強いられている。いつもなら、子どもや孫にも会えるにぎやかな春休みのはずが、万が一の感染リスクを避けようと帰省しない家族も。多くの高齢者施設では家族との面会を禁止して約1カ月がたち、心配する家族からは悲鳴が上がっている。

 「年寄りの感染が一番怖い。周りに迷惑を掛けたくないから、10日に1回、30分しか外に出ない」。福岡市城南区の川端矢須子さん(90)は外出を近所のスーパーに限っている。路線バス乗り放題の定期券で百貨店に出かけたり、同市・天神まで散歩したり、特技の漫談を高齢者施設で披露したりと、これまでの活動的な毎日から一変。日中もテレビを見て過ごす。「朝日を浴びるようにしているけど体も弱る。早く収まるよう念じるばかり」と話す。

 4年前に妻を亡くしてから1人暮らしの井上隆信さん(86)=福岡県朝倉市=は、毎月顔を出していた詩吟の稽古や俳句会が軒並み中止になった。物心ついたときから毎年のように参加していた集落の花見も今年は見送りに。「病気には勝てないので仕方ないけど、感染を気にし過ぎると何もできなくなる」。自炊や、家庭菜園の手入れに精を出し、普段通りを心掛ける。

 孫に会うのを心待ちにしていた高齢者にとっては一層、寂しい春休みとなる。

 福岡市の契約社員の女性(40代)は、2日から休校になった小学3年の子どもを近畿地方の実家に遊びに行かせることも考えたが思いとどまった。70代の父は呼吸器系の持病があり、「私や子どもが症状のない感染者だったらと思うと怖い。子どもはおじいちゃんに会いたがっていたけれど…」。収束するまで、帰省は控えるつもりだという。

 厚生労働省の通知などを受け、多くの高齢者施設では家族など外部者との面会を制限し約1カ月がたつ。

 「母は話せず電話もできない。心配で夜も眠れない」。佐賀県の女性会社員(38)は涙ぐむ。4年前にくも膜下出血で倒れた70代の母親が入所する特別養護老人ホームは2月下旬から面会禁止に。これまでは毎日、父親(71)か女性が顔を見に行き、面会中に、母親が持病のてんかんの発作を起こすことも度々あったという。「母は要介護5で助けも呼べない。顔も見られず、触れられず、家族も不安で限界」と訴える。

 82人が入居する介護付き有料老人ホーム「アンクラージュ大橋南」(福岡県春日市)では2月17日から施設内での面会や業者の出入りを禁止し、1日3回の消毒など感染防止対策を徹底する。入居者に会えずに心配する家族には、写真付きの手紙を送ったり、テレビ電話をしてもらったり、柔軟に対応している。

 施設内でのサークル活動は通常通り、毎日開催。16日は、マスク姿の23人が「元気ハツラツ体操」で手や足を動かした。森山広子部長(53)は「活動をなくしていくと感染のリスクは低くなっても、体の機能が落ち、ストレスもたまる。動いて、食べて、いつも通りの元気な生活が送れるサポートをしたい」と話す。 (吉田真紀)

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