アジア人差別助長、米国で懸念 トランプ氏の中国批判…日本人も矛先

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 【ワシントン田中伸幸】トランプ米大統領新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、国民に外食などの自粛を求める15日間の行動指針を公表して22日で1週間。全米50州のうち8州が事実上の外出禁止令を出すなど感染拡大は勢いを増し、事態の一層の悪化を危ぶむ声が高まっている。いら立つトランプ氏は「中国ウイルス」との表現を用いて中国批判を繰り返しており、市民の不満の矛先がアジア系住民へ向けられる懸念も強まっている。

 週末の21日、首都ワシントンの桜の名所として知られるポトマック川につながる池のほとりでは、人々が華やかな桜を楽しみながら散歩していた。例年は約100万人が訪れるが、今年は地元当局が花見自粛を要請し、明らかに人出が少ない。

 トランプ氏が16日に発表した行動指針はレストランやバーでの外食のほか、旅行や10人を超える集まりなどの自粛を求めた。だが指針に強制力はない上、散歩は対象外だ。桜を楽しんでいた中年の女性は「人に近づきすぎないよう歩く」と話し、道行く人とぶつからないよう譲り合っていた。ただ医療専門家が求める「他人との距離を1・8メートル保つ」のは不可能だ。22日には地元警察が付近の車両の通行を規制し、花見客の抑制を図った。

 指針発表後も、南部や西部の海岸など観光地に若者らが大勢押し寄せる事態が多発。連日、トランプ氏と一緒に記者会見するペンス副大統領は22日もテレビカメラに向けて指針を掲げ、改めて協力を呼び掛けた。

 一方で感染拡大への不安は外出禁止令が出ていない地域でも日に日に高まる。ワシントンや近郊の南部バージニア州の繁華街などでは、ほとんどの飲食店がすでに休業するか持ち帰りだけの営業に。多くは行動指針の期限となる今月末を超え、4月以降も休業する方向だ。トランプ氏は22日の会見で「(自粛延長の)必要がないことを願っている」と述べたものの、国内には悲観的な見方が強まる。

 政府への失望や批判をそらすため、トランプ氏は未知の感染症に対する歴代政権の備えが「時代遅れだった」と言い立てたり、主要メディアの報道が「不正確だ」と不満をあらわにしたり。さらに「中国ウイルス」と繰り返し述べ、発生源として対応の遅れなど中国の責任を強調している。

 これに対し、中国系米国人は「差別の助長につながる」(女性下院議員)と非難。繁華街を歩いていた日本人男性が白人男性に「なぜ外出しているのか」とののしられたり、日本企業の駐在員がタクシーの乗車拒否に遭ったりしており、「アジア系全体に差別が広がるのではないか」(バージニア州在住の女性)と心配する声が広がっている。

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