東京五輪パラ 延期なら速やかな決断を

西日本新聞 オピニオン面

 2カ月前、この事態を予想した人がどれだけいただろうか。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、7月24日から開会予定の東京五輪・パラリンピックの延期論が浮上してきた。決定権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)は延期も含めた検討に入り4週間以内に結論を出す、と発表した。

 世界保健機関(WHO)が「パンデミック(世界的大流行)」と評価する現状と「アスリート(選手)第一主義」の理念に照らせば、妥当な判断だろう。IOCは大会組織委員会や東京都、日本政府などと連携し、できるだけ早期に結論を出すよう最善を尽くしてほしい。

 東京五輪パラを取り巻く状況は、この1週間で急変した。新型コロナ感染者数は五大陸全てで30万人以上に達している。

 感染防止のため各国が入国制限や外出禁止などの措置を取る中で、4カ月後の東京に、五輪の出場者約1万1千人とチームスタッフなどのほか、膨大な数を見込む訪日客を迎えることは現実として難しい。

 多くの国で代表選考の場も中止や延期となり、選手は十分な練習さえできない状況だ。不安の声や出場の辞退表明、対応が遅れるIOCへの批判が出るのも無理からぬことだ。最高のアスリートがベストの状態で競技に臨めないのでは、五輪パラの意義さえ薄れてしまう。

 「完全な形での実施」を訴えてきた安倍晋三首相も、きのうの参院予算委員会で「延期の判断も行わざるを得ない」と初めて言及した。背景にはIOCの発表にあった「中止は問題解決にも誰の助けにもならず、議題になっていない」との言質があるのではないか。日本国内の関係団体や世論の最大公約数も、中止だけは避けたいという一点にあると考えられる。

 ただ、延期といっても簡単なことではない。時期について今秋、1年後、2年後などが議論されているが、競技団体のスケジュールに加え、テレビ放映権やスポンサーとの調整もある。最も大切な選手の選考基準をどうするのかという難問もある。最終段階に入っていた大会運営への影響も計り知れない。競技会場や選手村の施設の確保に加え、新たな財政負担や補償問題も浮上するだろう。

 仮に延期で関係者の合意、調整ができたとしても、4年に1度の開催が近代五輪大会の大原則であり、五輪憲章の改正が必要な場合もあるという。

 これまでどの国も経験したことのないような試練だが、東京五輪パラの実現には不可避なハードルともなった。知恵を絞って乗り切るためにも、仕切り直しは早い方がいい。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ