持続可能な社会へ学生がアイデア競う 13カ国88大学作品、九大で審査

西日本新聞 ふくおか版 郷 達也

 国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)に、デザインの力で貢献していく九州大大学院芸術工学研究院の専門家組織「SDGsデザインユニット」(ユニット長・井上滋樹同院教授)が4月、設立から2年を迎える。今月、持続可能な社会づくりのアイデアを競う「SDGsデザインインターナショナルアワード2019」を初めて開催。世界13カ国、88大学から223件もの作品が寄せられた。詳細を報告する。

 同ユニットは同院のデザイン系や文化人類学、哲学など専門分野が異なる教授ら26人で構成。デザインの役割を「色や形による造形表現の枠を超え、社会が抱える課題を解決する有効な方法」と捉え、市民や産業界、国際機関などと連携する。これまで南アフリカ共和国での貧困実態調査や九州豪雨の被災地、朝倉市での稲刈りの復興支援など、さまざまな教育研究、制作活動を展開している。

 同アワードも「社会を変える可能性のある学生を表彰し、勇気づけ、彼らが生み出した解決策を多くの人々と共有する」と位置づけた人材育成の一環だ。

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 「賞は立ち上げたばかり。前例がない中で200を超える作品数には驚いた。関心の高さがうかがえる」。実行委員長の井上教授は14日、福岡市南区の九大大橋キャンパスで開かれた同アワードの最終審査で手応えを語った。審査は新型コロナウイルス感染症の影響のため無観客で実施したが、4カ国6拠点をインターネットでつなぎ、1次、2次審査を通過した5グループが白熱したプレゼンテーションを行った。

 最優秀賞は、中国の浙江農林大学のジャン・チンさん。伝統的なノリ養殖を浮島の状態で行い、20年後にはそのノリ養殖が広がって赤潮被害が少なくなり、何世代にもわたって持続可能な地元産業が展開できると提唱した。「潮間帯に海の森ができるという生態系の回復やエコツーリズムの展開というシナリオは説得力があった」と審査員からも高評価を得られた。

 昨夏、ノリ養殖が盛んな島に行き、地元の人の豊かな暮らしを目の当たりにしてテーマを設定したというジャンさん。受賞後の取材に「生態系の問題解決につなげたい」と語った。

 準優秀賞は、東京工業大の伊藤まゆみさんの「モバイル・フットバス」。SDGsの目標10の「人や国の不平等をなくそう」を実現しようと、移動式の足湯を製作した。フィンランドで一般市民を対象に社会実験し、外国人同士でコミュニケーションが生まれた、とリポートした。「人と人を近づけるユニークなアイデア」と評された。

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 地元も奮闘した。九大院芸術工学府の若原千有希さんらは、バングラデシュ南東部の難民キャンプに暮らし、差別や迫害を受けているミャンマーの「ロヒンギャ難民」の現地調査を踏まえ、難民と地元住民らをつなぐネームプレートを製作、特別奨励賞に選ばれた。

 メンバーの1人で同学府の田中遼太さん(25)は「苦労したが評価されてうれしい。参加者のデザインのレベルも高い」と刺激を受けた様子。「新しく生まれた価値をどうしたら多くの人が享受できるか考えていきたい」と先を見据える。

 審査員長の平井康之・九大院芸術工学研究院教授は「SDGsは、テーマが非常に広範で、取り組んでいるのは行政や企業中心が多く、一般市民には何だろうという声もある。アワードが未来のわれわれのデザインを作っていくという第一歩になれば大きな意義になる」と総評した。

 第2回のアワード2020は、5~8月に作品を募集し、11月に最終プレゼンを行う。同院長の谷正和教授は「人とアイデアが行き交う結節点となり、新しい価値が生まれる場をつくりたい。社会をよりよくするような提案が集まることを期待する」と話した。 (郷達也)

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