タイ出稼ぎ者が国境に殺到 仕事先休業、感染に不安も

西日本新聞 国際面 川合 秀紀

 タイで働くミャンマーやラオスなど近隣国からの出稼ぎ者が、母国に戻ろうと各地の国境地域に押し寄せている。タイで新型コロナウイルス感染が拡大し、商業施設などの仕事先が一時閉鎖されたためだ。「いつ国境閉鎖になるか分からない」。日々変化する情勢に不安が高まっている。

 23日昼。バンコク北部の長距離バスターミナルは、マスク姿の乗客でごった返していた。ベンチには「席を空けて座って」の張り紙。ラオス人男性のプンさん(28)の目的地は、ラオスと国境を接するタイ東北部ナコンパノム。メコン川を渡るバスに乗り換え、帰国するつもりだ。夜8時に出発し、到着は翌朝になる。

 仕事先の飲食店は、政府の命令で22日から持ち帰りを除いて閉店。自分も休みになり、実家に送っていた給料はもらえない。ラオスでも取材翌日の24日、国内初の感染者が確認されたが「(感染者が急増している)タイにいる方が心配。保険証もないので、もし感染したら怖い」。

 タイ当局は、22日夜までにすべての陸上国境での出国を禁じると発表。だがバンコク・ポストによると、ナコンパノムの国境にはラオスを目指す人が殺到したため、23日も「出稼ぎ者限定」で出国を認めた。カンボジアやミャンマーと接する他の国境でも同様の措置が取られているもようだ。プンさんも知人から情報を聞いていたが、不安は消えない。「いつ帰国できなくなるか分からない。もし駄目なら別の場所から帰る」

 タイは外国人労働者300万人以上を抱える移民大国で、最も多いとされるのがミャンマー人。同国東部ミャワディ出身、ソムさん(30)が待つバスは、家に近いタイ北西端メソトに向かう。「地元の友人から『今日なら国境を越えられる』と聞いて(帰国を)決めた」。バンコクのクリーニング店で働いて約10年。政府の休業命令に基づいて店も一時閉店となったため、初めて長期休暇を取った。

 23日夜に初の感染者を確認したミャンマー政府は海外からの入国を制限するほか、タイなどで働く自国民の労働者に帰国を避けるよう呼びかけている。ソムさんは政府の対応を「気分が悪い」と憤る一方で、別の不安も口にした。

 「私が帰ったら近所から(感染しているのではないかと)怖がられるかもしれない」。だが、タイでは飲食店や娯楽施設が軒並み休業に追い込まれ、他に仕事が見つからない。「いまは家に戻って米を作るしかない」。ソムさんのそばには、家で待つ3歳の息子用に買った新品の補助輪付き自転車があった。

 タイのプラユット首相は24日の記者会見で、26日に非常事態を宣言する考えを表明した上で、感染拡大を防ぐため「帰郷しないように。さもなければ罪に問われる」と警告した。 (バンコク川合秀紀)

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