森友学園問題 なぜ再調査をしないのか

西日本新聞 オピニオン面

 決裁文書の改ざんという前代未聞の不祥事は一体、誰が何のために引き起こしたのか。疑惑の真相解明に向けた新たな契機としなければならない。

 学校法人「森友学園」の国有地売却問題で財務省近畿財務局の担当職員だった赤木俊夫さんが、同省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官の指示で決裁文書の改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、遺族が国と佐川氏に損害賠償を求めて提訴した。遺族は赤木さんの手記や遺書も公表した。

 この問題が発覚したのは2017年2月だ。安倍晋三首相や昭恵夫人の関与も取り沙汰され、首相は同17日の衆院予算委員会で「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と断言していた。

 手記によれば、近畿財務局の上司から赤木さんに初めて改ざんの指示があったのは、この首相答弁の9日後だった。

 赤木さんは「全て佐川局長の指示です。学園に厚遇したと受け取られる疑いの箇所は全て修正するよう指示があったと聞きました」としている。

 手記は関係者が実名で記され、日時や会話のやりとりなど具体的な情報や動きが詳述されている。改ざんに手を染めることへの抵抗と苦悩とともに「財務省が真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因」「うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応」と所属組織を告発している。

 何より驚かされるのは、こうした遺書や手記を突き付けられても、首相や麻生太郎財務相が「再調査の必要はない」と開き直っていることだ。その論拠は財務省が18年6月に公表した調査報告書と「齟齬(そご)がない」「新事実がない」からだという。

 財務省の報告書は理財局長だった佐川氏が「方向性を決定づけた」としてはいる。しかし、具体的な指示や動機、背景には踏み込んでいない。

 いわば核心部分の曖昧さは麻生財務相が当時、いみじくも「それが分かれば苦労しない」と述懐した通りだ。財務省の一局長だけの判断で国会と国民を欺く決裁文書改ざんが可能なのか。そんな疑問も改めて湧く。

 そもそも財務省の調査は内部調査にすぎず、身内による聞き取りの限界が指摘されていた。ここは第三者機関で再調査するのが当然ではないか。

 国会にも注文したい。立法府もまんまと財務省に「だまされた」問題である。与野党の別なく、国政調査権を駆使して政府と財務省の姿勢をただすべきだ。「刑事訴追の恐れがある」として証人喚問で肝心な部分の証言を拒んだ佐川氏の再喚問が必要なのは言うまでもない。

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