「応援させて」届いた励ましの声…業者が再認識した給食の意義

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全国的に臨時休校措置がとられて3週間。この間、学校給食物資を納めていた業者も大打撃を受けた。それでも福岡県で給食牛乳の納入を担う業者の一つ、永利(ながとし)牛乳(同県太宰府市)の長谷川敏社長は「苦しい中でも確信できたことがある」と話す。それは、牛乳、学校給食の大切さが、社会全体に強く認識されているとの実感だという。

 福岡県太宰府市の「永利牛乳」

 「小学校、中学校で毎日飲んでいました。ずっと応援しています」「給食でお世話になっているので心配しています。牛が病気にならないよう、酪農家の方が前向きに仕事ができるよう、ささやかですが応援させてください」

 休校措置に伴う給食関係事業者の苦境が報道で伝わる中、同社には連日、激励のメッセージを添えた商品購入希望の電話や手紙などが届いている。

 太宰府市が「市内の業者の中では最も大きな影響を受けている」として、ふるさと納税の返礼品に採用。この2週間で185件の申し込みがあった。工場に直接買いに来る人も「思いのほか多い」(長谷川社長)といい、休校中とあって親子連れでやってくる姿も見られるという。

 同社は県内9市3町の学校に1日12万個を納入しており、自社の出荷先の7割を占める。利幅は薄くとも安定した経営基盤とみられがちだが「廃業した同業者の受け持ち分を引き受け続ける中、ここまでふくらんだのが実情」。4月以降、受け持ち分をさらに増やさざるを得ない状況もあるといい、生産ラインを増設しようとする矢先に見舞われたウイルス禍だった。

 現在、残る3割に当たる一般販売分の生産を続けているが、少量なので作業は午前中で終わってしまう。それでも従業員には通常通りに給料を支払うと確約し、学校再開に向け態勢を整える日々。国はパンや牛乳をはじめ給食事業に関係する業者に対して支援策を打ち出しているが、手続き面で未整理の部分もあり、現場の不安は解消されていないという。

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 長谷川社長は、中小の同業者でつくる全国乳業協同組合連合会の会長も務めており、国や他の業界団体との折衝にも忙殺される中、消費者から寄せられる応援メッセージは「本当に胸に響く心の支え」と言う。

 改めて認識したのが、学校給食の意義という。

 学校給食法によれば、その意義は、児童・生徒たちの適切な栄養摂取による健康の保持増進、望ましい食習慣づくり、自然の恩恵について理解し命を大切にする心を養う-などと説明されている。

 今回の臨時休校で、子どもたちの食を巡る課題も浮き彫りになった。特に家庭環境に恵まれない子にとっては、適切な栄養摂取、望ましい食習慣といった面で、毎日の学校給食が果たす役割は大きい。

 学校給食自体が、1889年に山形県の小学校で貧困児童対策として行われたのが始まりとされる。学校給食法の制定も背景には戦後の食糧難があった。取材を通じ、そうした原点を思い起こさせられもした。

 パンと牛乳を軸とした給食のあり方には、さまざまな議論もあるが、私たちの暮らしの中に定着しているのも事実だ。「消費者からの激励は、今の学校給食制度を堅持すべきだという社会の声に聞こえた」と語る長谷川社長。私たちも、新学期からの学校再開を願い子どもたちの健やかな食に改めて思いをはせたい。 (特別編集委員・長谷川彰)

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