読書漬けだったキャンパスライフ…きっかけはサークルでの劣等感

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(56)

 お盆も終わり、8月も下旬に入りましたが、それにしても暑いですね。いかがお過ごしですか。中学生や高校生の皆さんは、夏休みの宿題に読書感想文が出ていませんか。私が本に興味を持ち始めたのは遅くて、青山学院大時代です。やがて読書は私の推進力となりました。少し、読書論を。

 読書は所属したボランティアサークル、青山こども会に影響を受けました。部会の議論が熱かった。「貧困をなくすには?」「いかに社会を変えないといけないか」と口角泡を飛ばしながら話す先輩たち。「誰々の本はこういうふうに書いている」と例を出し、話に厚みを持たせていました。

 きれいな女性に誘われたという軟弱な入部動機で、何も知らない私は議論に入っていけません。恥ずかしく、いたたまれない気持ちになって、本を読まねばと決心しました。

 むさぼるように読みましたね。純文学から社会学、思想、哲学、心理学、あらゆるジャンルを。フロイト、マルクス、ルソー、ゴーリキー、ドストエフスキー、カフカ、O・ヘンリーに太宰治、芥川龍之介、坂口安吾、開高健、大江健三郎、武田泰淳…。全共闘世代の支持を得た高橋和巳の全集も読破しました。宗教団体の盛衰を描いた「邪宗門」は難解でしたが、読後になぜか涙が出ました。

 本棚に並ぶ分厚い本を眺めると、これらを読んだという充実感が持てます。放送作家として原稿用紙わずか10枚のネタを3日間、うんうんとうなって書いたことがありますが、作家たちは何年もかけてこつこつと書いてきた。それを受け取るのですから、知力にならないわけがない。

 一流といわれる芸人さんと仕事をしましたが、彼らの芸の才能には勝てません。それでもたくさんの本を読んできた自負があります。先人の知を栄養にしています。人間としての総合力では負けない気持ちを秘めて、たかが笑いの台本ですが、しっかりしたものを出してきたつもりです。

 さて、中高生の皆さん、読書感想文をまだ仕上げていないのなら、小説「アルジャーノンに花束を」がお薦めです。脳手術の実験台となり、驚異的な知能を手にした青年の成功と悲劇を描いたダニエル・キイスのベストセラー。ぜひ。

 放送作家としての仕事はほとんど東京でしたが、大阪出張もあり、道中の新幹線で読書を楽しみました。行き先はなんばグランド花月。吉本新喜劇でした。 

(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

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 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年08月22日時点のものです

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