大嫌いだった犬、飼うことに きっかけは妻の熱意とペロペロアピール

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(64)

 スノッブな(気取った)軽井沢が嫌いだったのに、心身の保養のために住むことになった私。今度は嫌いだった犬を飼うことになりました。

 妻は小さい頃に、アメリカン・コッカー・スパニエルなどを飼っていた大の犬好き。一方の私は大の犬嫌い。6、7歳の頃に住んでいた佐世保の大黒町市営第三住宅の近くに4、5匹の犬がいました。とにかくどの犬もよくほえる。シェパードのような大型犬にかみつかれそうになったこともありました。妻と違い、怖い犬が記憶に染みついていたのです。

 2000年9月30日のことでした。佐久平駅(長野県佐久市)近くのホームセンターで買い物をした帰り、近くのペットショップに立ち寄ると妻が叫びました。

 「イングリッシュよ! イングリッシュ!」。そこにいたのは妻が大好きなイングリッシュ・コッカー・スパニエルの子犬でした。

 店員さんから受け取って妻がだっこすると、ほえることもなく、妻の顔をペロペロ。もう妻はメロメロ。「飼おうよ」と私に勧める妻の顔を子犬はここぞとばかりに、ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ。私は妻の熱意と、子犬のこれでもかのペロペロアピールに負け、飼うことになったのです。

 雄だったことと呼びやすさで「ボーイ」と名付け、私たちの「息子」となりました。イングリッシュ・コッカー・スパニエルは「麻薬や爆薬の捜査犬としても優秀」と図鑑に書いてあり「家庭犬としても輝かしいキャリアを築いた」と。

 素晴らしいじゃありませんか。「実に賢く、実に甘ったれ」とも。うん、よいではないか、よいではないか。生まれついた気質に私のしつけが加われば、家庭犬としての輝かしいキャリアをわが家できっと築いてくれるでしょう。

 結婚して24年。当時47歳。子どもが巣立った後の夫婦は、いや応なく向き合わなければなりません。私たちは過去の問題でぎすぎすすることもありました(檀一雄の小説「火宅の人」のようになりまして)。恐妻は忘れた頃にやって来る-。もしかしたら、私と同じような経験がある、すねに傷を持つ読者もいらっしゃるのではないですか。

 そこへ登場したボーイという名の「息子」は、夫婦の間に立って2人をなだめてくれました。私と妻のイライラギスギスは、ボーイのおかげでメロメロニコニコになったのです。
(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

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 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年08月31日時点のものです

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