助かってくれ…“かけがえのない子ども”ボーイに起こった異変

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(66)

 愛犬ボーイに異変があったのは2005年1月17日、家の周りは41センチの雪に覆われていました。1964年に24時間の降雪量を観測し始めて以降、最高の積雪だったそうです。こうして詳しく覚えているのは、職業柄でしょうか。気になることはメモを取る習性があるのです。

 雪がやんでいる間に散歩に出掛け、ボーイは大喜びでマーキングをしながら意気揚々と歩いていましたが、やはり尿が濃かった。実は2日前、家の中のトイレシートに残されたおしっこが濃かったのです。気になった私は、雪に足を取られながら急いで帰宅。地元の動物病院で検査してもらいました。

 「膵臓(すいぞう)が大きくなっている」。エックス線で確認した医者はそう説明しました。貧血も起こしている。採取した血液は東京の動物病院に送られました。

 見たところ、元気に動いているので、薬で治るだろうと楽観的に構えていました。翌朝、起きてきた私を見てうれしそうにしっぽを振りました。でも、いつものジャンプをしません。また病院に向かいました。予定されていたテレビ番組の会議は、私の体調のせいにして休みました。

 検査の結果は免疫性溶血性貧血。点滴したボーイを連れて帰り、人間用の「家庭の医学」で調べると、自己免疫性溶血性貧血と書いてありました。知れば知るほど重苦しい気持ちになる病気でした。

 3日連続の診察になり、いつもは朗らかな獣医師の表情が次第に曇っていきます。「この病院では治療できない。自分の手に負えない」ということでした。重病とは知らず、無邪気にしっぽを振るボーイ。対照的に私は胸が苦しくなり、妻は涙を流しました。医療設備が整っている東京の動物病院を紹介され、1泊2日の検査入院をすることになりました。

 散歩の催促をしたことがなく、落ち着いていたボーイ。別荘地の舗装されていない道を歩いた後、土ぼこりにまみれた体をシャンプーで洗い、ドライヤーをかけても嫌がらないボーイ。仕事で怒りを抱えた私を優しい瞳で迎えてくれたボーイ。まさに私たちのかけがえのない子どもでした。

 助かってくれ。翌日、妻とボーイを乗せ、雪道用のスタッドレスタイヤを履いた車で雪が残る軽井沢をたち、東京へ。妻が「元気になったら戻ってこようね」と後部座席の「息子」に言い聞かせながら。

(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

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 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年09月03日時点のものです

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