「おやじかも」手合わせ 遺骨収集の男性、DNA鑑定に期待

西日本新聞 社会面

 厚生労働省は4月から、硫黄島で戦死した日本兵の遺族から検体の提供を募り、これまでに蓄積してきた遺骨のDNAと照合する鑑定作業に着手する。これまでは記名のある遺留品など有力な手掛かりがある遺骨だけが鑑定対象だった。遺族らの高齢化が進む中、新たな手法への転換で一人でも多くの身元特定につなげたい意向だ。

 鑑定の条件緩和に期待する遺族の一人、弓削光知(ゆげみつのり)さん(76)=鹿児島県垂水市=は、硫黄島協会鹿児島県支部の一員として遺骨収集に携わり、これまで19回の上陸で約80人分の骨を拾ってきた。

 父正男さんは陸軍歩兵第145連隊衛生隊に所属し、27歳で戦死した。死亡通知と一緒に届いたのは、砂と茶わんが入った白木の箱だけ。喪服姿の母フミ子さんがその箱を一心に抱きかかえたと親族から伝え聞き、「こんなもので父の死を理解しろというのか」と怒りがこみ上げた。

 現地での収集活動は、銃撃を受けたような損傷の激しい頭蓋骨や、土とも砂とも見分けがつかない骨片をスコップによる手作業で集める。「どれもこれも父じゃないかと思われて、両手を合わせてきた」

 検体の提供を希望している弓削さんだが、胸中は複雑だ。これまでに収集された遺骨は約1万人分。ただ、検体とのDNA照合が可能なのは約500人分にとどまるとみられるからだ。照合結果が出るまでには相当の時間を要する上、確実に父の遺骨にたどり着くとも限らない。2月の遺骨収集にも参加した弓削さんは「島に散った全ての命が見つからなければ戦争は終わったことにならない。土に眠ったままでは納得できるはずもない」と話し、今後も体力の続く限り島を目指すつもりだ。 (帖地洸平)

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