関与組員、詳細な役割証言 元警部銃撃事件 【工藤会トップ裁判】

西日本新聞 社会面

〈マンスリー報告 3月〉総裁らの指示解明できず

 特定危険指定暴力団工藤会トップで総裁の野村悟被告(73)とナンバー2の会長田上不美夫被告(63)の公判は、元福岡県警警部銃撃事件(2012年4月)の証人尋問を終えた。検察側証人として事件に関与した多数の組員が出廷し、行動確認や銃撃の状況など各自の役割を詳細に証言。一方で、事件の指示役とされる組幹部=組織犯罪処罰法違反罪などで公判中=は証言を拒み、最大の焦点である野村、田上両被告の関与は明らかにならなかった。

不満をあらわに

 ≪「こそこそ外で人と会いよるらしいな」。元警部が工藤会の元組員と接触したことを知った野村被告は、元警部に対して批判的な発言を繰り返したという。これが事件に至った動機だったのか-≫

 元警察官 09年3月~11年3月にかけて元警部と工藤会の情報収集に当たった。09年4月、内部情報を得るため元警部と広島県内の飲食店で会を破門された元組員に接触した。

 元警部は「工藤会は一枚岩じゃなかろうが」「野村(被告)は20億円持っとろうが」などと話して情報を引き出そうとしたが、元組員は「私は会長(野村被告)と理事長(田上被告)を守っていきます」と繰り返した。

 警察官 元警察官と同じ時期に元警部と仕事をした。元組員と接触して1~2週間後、北九州市内のゴルフ場で野村被告が元警部に対し、「こそこそ外で人と会いよるらしいな」「最後になって悪いもん残したな」と告げていた。元警部は意表を突かれたような表情だった。

 弁護側 「最後になって悪いもん残したな」という発言は、報告書や警察官調書には記載がない。そのようなやりとりはなかったのではないか。

 警察官 私の記憶ではある。私は報告書に記載したが元警部が添削する中で削除した。調書に記載されていない点は調書を作成した人じゃないと分からない。

動きだした計画

 ≪12年3月、事件に向けて元警部の行動確認が始まった。組員らは指示役とされる組幹部の指図で、元警部宅を確認し、出勤時間や通勤方法の把握を進めた≫

 組員 同月中旬ごろ、組幹部から「この家を覚えておいてくれ」と言われた。元組員(1)と2人で人の出入りを確認し、組幹部に報告していた。その後は複数回、朝と夕方に(元警部が通勤で利用する)駅に行き、元警部が現れる時間帯を連絡した。

 事件前日には組幹部から「バイクを用意してくれ」と言われ、日付が変わるころに元組員(2)とミニバイクを盗んだ。事件当日の朝は元警部の出勤を確認し、組幹部から指定された携帯電話に(1回だけコールして電話を切る)「ワン切り」をした。

「報酬」どこから

 ≪公判には実行犯の元組幹部も出廷し、事件に関与した経緯や銃撃の状況を述べた。事件後の「報酬」の出どころが会最高幹部である可能性を示す証言もあった≫

 元組幹部(1) 事件の約2週間前、組幹部から「仕事がある」と言われた。事件前夜に拳銃を渡され、「元警察官(元警部)を撃ってほしい。足元を狙って2発、それが無理なら地面に向かって2発撃て。絶対に殺したらつまらんぞ」と指示された。足元は難しいと思い、太ももを狙うことにした。

 組幹部から携帯電話も渡され、「この電話が鳴ったら(銃撃を)スタートするように」と言われた。現場は通勤通学路でたくさんの人がおり、大丈夫かなと心配になった。

 事件当日、携帯に連絡があったのでミニバイクで徐行したまま元警部に近づき、1メートル50センチくらいの距離で銃撃した。元警部の体勢が崩れ、狙ったところに当たったと思った。

 事件の約2週間後、組幹部から現金50万円が入った封筒を渡された。銃撃の見返りだと思ったので「金をもらうためにやったんじゃありません」と返したが、組幹部は「いいから取っておけ」と言い、封筒を胸ポケットに入れられた。

 当時は親分(会ナンバー3で理事長の菊地敬吾被告=組織犯罪処罰法違反罪などで起訴)の財布を管理していたが、(現金を渡された)直前に親分の財布から50万円がなくなっていたことを思い出した。

証拠隠滅も分担

 ≪実行犯の送迎や証拠の処分など、役割分担は細部に及んでいた。送迎や犯行に使われたミニバイクの処分を担った元組員らも、事件後に組幹部から現金を受け取ったと証言した≫

 元組員(2) 事件前日、組幹部らと実行犯の送迎場所や待機場所を確認した。当日は実行犯を乗せて現場近くの駐車場まで送った。事件の約1週間後、組幹部から「飯、食っとけ」と言われ現金5万~10万円を渡された。

 裁判官 現金と事件の関係について、組幹部と話したことはあったか。

 元組員(2) ない。

 弁護側 ほかに組幹部から小遣いをもらったことは。

 元組員(2) 何回かもらった。現金3万~5万円。

 元組員(3) 事件前日に(現場付近の)用水路に連れて行かれ、組幹部から「ここでバイクを捨てろ」と言われた。当日、実行犯が使ったバイクを受け取って捨てた。

 組幹部から「取っとけ」と言われて現金15万円が入った封筒を渡された。小遣いをもらうことはあったが、多くて3万円ぐらい。バイクを捨てたから(その報酬)だと思った。15万円という金額は(被害者の行動確認をした)建設会社役員射殺事件(11年)のときにももらった。

全体像は見えず

 ≪指示役とされる組幹部が検察側証人として出廷したが、一切の証言を拒否。野村被告ら指示役より上の立場の最高幹部については関与の有無、程度は不明のままとなった≫

 裁判長 (うそを言わずに証言するという)宣誓書に署名がないが、宣誓する気がないのか。

 組幹部 ない。

 裁判長 証人は自分の公判も進行中。この法廷で話したことを、あなたの公判では証拠として扱わないとしても証言するつもりはないか。

 組幹部 はい。

 裁判長 正当な理由なく証言を拒んだとして、刑事訴訟法に基づき過料10万円を決定する。 (工藤会トップ裁判取材班)

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【ワードBOX】元福岡県警警部銃撃事件

 2012年4月19日朝、北九州市小倉南区の路上で、勤務先の病院に出勤するため歩いていた元警部が左太ももと腰を銃撃され、重傷を負った。元警部は11年春に退職するまで33年間、主に工藤会捜査を担当。県警は15年7月、組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などの疑いで、野村悟、田上不美夫両被告ら計18人を逮捕し、両被告を含む11人が起訴された。裁判では、実行犯ら同会系組幹部らの実刑判決が確定した。

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