五輪1年延期 感染を抑え込み準備急げ

西日本新聞 オピニオン面

 7~9月に開催予定だった東京五輪・パラリンピックが1年程度延期されることになった。国際オリンピック委員会(IOC)が検討を表明して2日目の即断である。新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)が加速する現状を踏まえれば、妥当な判断と言える。

 ただ、来年の開催は確実なのか予断を許さない。開催は、新型コロナの事態収束が前提だからだ。日本政府はまず世界の国々と連携して、感染拡大を抑え込むとともに診療法や治療薬、ワクチンなどの開発の実現に全力を挙げてほしい。

 感染抑止には市民一人一人の行動もまた重要だ。警戒を緩めず、助け合いたい。

 「中止」という最悪のシナリオは回避できた東京五輪・パラだが、延期開催は過去例のない難事業であり、日本の底力が問われる局面でもある。

 当面は具体的な開催時期の決定を急ぎたい。来年の春と夏では準備作業も大きく異なる。

 最も配慮すべきなのは、国内で決定していた代表選手の処遇だろう。現行通りという競技団体もあれば、来年に向け最高の選手を選ぶため、選考をやり直す団体もあるかもしれない。

 選手たちは、一生に一度だろう日本開催の大会への出場を目標に努力を重ね、今夏にピークを合わせてきたに違いない。延期は大変な負担となるが、この苦難を乗り越え、もう一段の高みを目指してほしい。

 いずれにしても「選手第一」の理念に沿って、誰もが分かりやすい公正な方法で実施されるべきだ。この「誰もが分かりやすい」透明度の高い手法は選手選考だけでなく、他の課題に取り組む際にも欠かせない。

 東京都を中心に広域にまたがる競技会場や運営ボランティアの確保がある。販売済みチケットの取り扱いをどうするか。大会組織委員会の維持、関係先との再契約や補償による追加経費も相当な額が想定される。組織委、国、東京都のいずれが負担するにしても、意思決定過程の透明性の確保を求めたい。

 国際大会の調整もある。例えば福岡市で来年7~8月、水泳世界選手権が予定されている。競技団体など多くの関係者は速やかに調整を始めてほしい。九州に約60自治体があるホストタウンも仕切り直しだ。気持ちを切り替えて準備を進めたい。

 延期開催がこれだけ難しくなった背景には、肥大化した五輪の商業主義もある。IOCが収入を巨額の放映権料やスポンサー料に頼る現状がある。酷暑の夏場に開催するのも同根だ。コンパクトな五輪は実現不可能なのか。五輪の根本を問い直す1年にもできないだろうか。

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