かんぽ、不正見過ごし対策逃げ腰 「郵政村の常識は世間の非常識」

西日本新聞 社会面 宮崎 拓朗

 かんぽ生命保険の不正販売問題を巡り、外部弁護士による特別調査委員会が26日に公表した追加報告書は、問題を矮小(わいしょう)化し、不十分な対応に終始した日本郵政グループの実態を浮き彫りにした。抜本的な改善を図るチャンスは何度もあったにもかかわらず、現状を把握しようとせず、不正を拡大させていった経緯を詳細に記している。

 報告書によると、危機感を持ち始めたのは2016年8月。金融庁からヒアリングを行う可能性を示唆されたのがきっかけだった。かんぽの保険は15年度に加入年齢の上限が引き上げられ、高齢者からの苦情が急増。不正販売が疑われる件数が算出され、かんぽ生命と日本郵便は17年1月に対策本部を設置した。

 同年12月、かんぽ生命の植平光彦社長(当時)と日本郵便の横山邦男社長(同)が協議。その場で横山氏は「顧客に保険料を返金するような事案を発生させた局員は、営業を行わせるべきではない」と提案したが、植平氏が「局員が不正を認めない限り、責任を問えない」と説明。処分基準は見直されず、多くの不正は見過ごされた。

 18年1月には、高齢者への意向確認強化などを盛り込んだ「総合対策」も開始。高齢者の苦情件数が減少したことなどから、両社長とも不正の規模感を把握しないまま「モラルが欠ける局員は大量には存在しないだろう」と考えていたという。

 ところが、同年4月にNHKの報道番組「クローズアップ現代+(プラス)」が不正販売の実態を報道。横山氏はその後の会議で「80歳以上の高齢者には販売しないなど、思い切った見直しが必要ではないか」と提言したが、植平氏が「80歳以上への販売を禁止すれば営業目標が達成できず、24億円の減収になる」と拒否。親会社である日本郵政の長門正貢社長(当時)の意向も確認した結果、部分的に禁止する案で決着したという。

 報告書は当時の対応について「放送内容に危機感を抱き、同様の事例が広がっている可能性を想定して調査を迅速にすべきだった」と指摘した。

 一方、金融庁は18年11月に乗り換え契約に関する問題点を指摘し、かんぽに対するヒアリングを開始。この結果、顧客に不利益が生じた事例が確認されたため、原因分析や改善策を実行するよう要請した。

 それでも、両社は現場の実態を把握しないまま従来の抑制策を強化するなど、前例踏襲的な対応しか行わなかった。

 不正に関する情報は組織内で十分に共有されず、役員の間には契約書類に顧客の署名・押印があることから「違法ではない」との意識が根強かった。特別調査委の聞き取りに対し、横山氏はこう振り返ったという。「郵政村の常識が世間の非常識となっており、モラルが低い者が相当数存在していたことには驚いている」 (宮崎拓朗)

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