「Fukushima50」「日本と原発 4年後」 映画愛好団体が合評

西日本新聞 吉田 昭一郎

 東京電力福島第1原発事故の直後、現場で事故対応に当たった作業員たちを描いた劇映画「Fukushima50」(若松節朗監督)が全国公開されている。事故から10年目に入り、あの未曽有の大惨事をあらためて考える機会だ。原因、背景も含めて事故の全容を俯瞰(ふかん)し検証するドキュメンタリー映画「日本と原発 4年後」(河合弘之監督、ネット公開中)と併せ、福岡シネマファン倶楽部の人たちに感想を寄せていただいた。

決死の連携、心の葛藤―「Fukushima50」

 東日本大震災の津波で福島第1原発は全ての電源を失い炉心を水冷できず、1、2、3号機がメルトダウン(炉心溶融)を起こす。4号機も含めて水素爆発が相次ぎ、大量の放射性物質が広域に広がった。

 「Fukushima50」は、関係者を取材した門田隆将さんのノンフィクションを原作に、事故に立ち向かった吉田昌郎所長(渡辺謙)と当直長(佐藤浩市)、作業員たちの闘いを、若松監督が人間ドラマに仕上げた。

 作業員たちが水素爆発回避のためベント作業で原子炉格納建屋に突入する場面はヤマ場だ。急性放射線障害の死が隣り合わせの危険な作業だが、一方で最悪なら首都圏も避難対象になりかねない国家的な危機もちらつく。現場の混乱がリアルに再現され、思わず身をすくめてしまいそうなシーンもある。

 同倶楽部の金矢敦子さんは感涙の鑑賞だった。「(事故対応が)場当たり的と言われる向きもあるが、誰かがやらなければならない作業だった。(一時は退避も検討されるが、放射線の危険な線量が低下し作業できる)奇跡が起こるのは、作業員の人たちによる努力の蓄積があってのことだと思えた」

 岡政隆さんは、作品の見どころを語る。「事故のことは今まで報道の範囲でしか知らなかったが、作業員たちの最前線における決死の連携と心の葛藤など、現場の緊迫した状況が詳しく描かれていた」

 舟越淳子さんも「倶楽部メンバーの間では、『感動した』という声が多くあった。吉田所長をはじめ極限状態の下での行動はよく描かれていた。映画で事故現場の出来事を知るのは貴重なこと」と評価する。

 ただ、終盤には不満もあったという。「(事故を起こした)東京電力や(国策で原発を推進した)国の責任にはほとんど触れられず、開花した桜並木の映像に復興を印象付けるかのような、情緒的な終わり方にがっかりした。突然家も荷物もそのままで避難を強いられた人たちの無念さ、愛するふるさとを汚染されてしまった人たちの怒りという視点もほしかった。最後はテロップで避難人数など被災状況のデータを出し、原発事故はまだ終わっていない、と伝える方法もあり得たのではないか」

 古賀哲男さんは厳しい感想だ。「現場で働いた『英雄たち』をどんなにたたえても、(帰還困難区域の立ち入り規制があり)いまだに廃虚が残る福島に復興が来るわけでなく、二度と同じような事故を起こしたり間違った危機対応をしたりしないで済むわけでもないだろう」。さらに、作劇面に注文もある。「登場人物や場面設定が多すぎる。首相ら政治家や東電本店幹部たちはカリカチュアライズ(戯画化)されすぎだ。その底に日本人なら感動するはず、面白がるはずだという安易な製作姿勢がのぞくような印象をもった」

 倶楽部代表の福永真理子さんは、技術過信のこわさを見た。「福島第1原発事故は絶対安全などあり得ない『証』として起こるべくして起きたことなのだ、最悪の事態に陥らなかったのも偶然のことだったのだ、とあらためて思い知った」

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