初めての落語会に四苦八苦 必死に語った柳家喬太郎さんのすごさ

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(74)

 小宮ちゃん(コント赤信号の小宮孝泰)の提案で、落語会を佐世保でやることになりました。2010年8月7日、佐世保市コミュニティセンター。日程も会場も決まりました。子どもたちによる前座の後は、小宮ちゃんと彼の紹介で出演が決まった柳家喬太郎さんの高座です。

 記念すべき第1回佐世保かっちぇて落語会。「かっちぇて」は佐世保弁で「仲間に入れて」の意味です。佐世保南高の同窓生らが中心となってボランティアを務め、その名の通り、仲間がどんどん入って手伝ってくれました。とはいえ、初めての落語会ですから、いろいろと大変でしたね。

 小宮ちゃんが落語をしていることを知らない人がほとんどだし、柳家喬太郎と言っても、「Who(フー)?」の状態でした。「笑点の人じゃなか」と残念がる人もいて、佐世保市民にとって喬太郎さんの知名度は低かったようです。

 でも「落語界のキョンキョン」と呼ばれた喬太郎さんは、当時の雑誌が企画した最も面白い噺家(はなしか)アンケートで、柳家小三治、立川志の輔ら名だたる師匠を抑えて堂々の1位。実力派の落語家ではないでしょうか。

 軽井沢に住んでいた頃、私はたまたまチケットをもらい、落語会に出掛けました。場所は軽井沢大賀ホール。そこで一人の噺家さんに引かれました。毒蛇を演ずる表情、身ぶりが艶っぽい上に品の良さを感じました。恥ずかしながら、全く知らない人でした。こんなに面白い噺家がいるのかと驚きました。

 それが喬太郎さんだったのです。「かっちぇて」のスタッフに、私は久しぶりの佐世保弁で彼のすごさを語りました。

 「喬太郎って人は、蛇ばこがんしてくさ、こがんしてさすっちゃん。そいがまた毒蛇やけんおかしかっちゃん。まんじゅうこわいでんくさ、えすか、えすか、て言いながら、まんじゅうばこがんして、何個も何個も食わすとさ。そいが…」

 訳「喬太郎って人は蛇をこうしてこうやって表現するのです。それが毒蛇ですからまたおかしいのです。まんじゅうこわいの落語では、怖い、怖いと言いながら、まんじゅうをこのようにして、何個も何個も食べるのです。それが…」

 みんな、ぽかーんとして理解できなかった様子でしたが、落語特集の雑誌を見せると、彼の人気と存在感を分かってくれました。

 こがんしてくさ、こがんして落語会にこぎつけたとよ。

(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

………………

 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年09月13日時点のものです

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