佐賀で“フランスパン革命” 農家の所得アップにも…新小麦の栽培拡大

西日本新聞 佐賀版 北島 剛

焼き色濃く、食感もちもち

 佐賀県内でフランスパン用小麦の栽培が拡大している。品種の名は「さちかおり」。海外産が中心だったパン用小麦は国産の需要が高まっており、さちかおりを使うパン店も出てきた。福岡県ではラーメン用小麦の「ラー麦」が定着し、長崎県ではちゃんぽん用小麦「長崎ちゃん麦」がある。全国有数の小麦生産地の佐賀県では“フランスパン革命”が起きようとしている。

 さちかおりは、農研機構九州沖縄農業研究センター(熊本県合志市)と鳥越製粉(福岡市)が協力して開発した。従来、九州でパン用品種として栽培されているのは「ミナミノカオリ」。だが、6月上旬の収穫前の雨で発芽する「穂発芽」が問題となっていた。

 さちかおりは、ミナミノカオリよりも熟期が早くて収量も多く、穂発芽しにくいという特徴がある。タンパク質含量は11%前後。フランスパンにすると、膨らみが大きくて焼き色が濃く、もちもちとした食感になる。うま味成分のアスパラギン酸やグルタミン酸の数値も高い。

 この小麦にいち早く目を付けたのが佐賀県。試験栽培を経て、みやき町で2017年(18年産)から栽培が始まった。

 今月23日、県庁であった農業改良普及事業の成果報告会。三神農業改良普及センターの山口栞さんが、さちかおりを安定生産するために取り組んできたことを発表した。

 パン用小麦は高タンパクが求められるため、肥料の量と時期について巡回指導を実施。さらに栽培講習会や生産者と製粉会社の交流会を開いて課題の共有を図った。県内の作付面積は、18年産の約8ヘクタールから、20年産は約240ヘクタールに拡大。佐賀市でも栽培されるようになった。山口さんは「生産者の栽培意欲の向上につながっている」と強調した。

 栽培農家はどう思っているのだろうか。米やアスパラガスなどを生産販売するエムズグリーン(みやき町)の松永淳さんは、18年産からさちかおりの栽培を開始。今年は約10ヘクタールまで拡大した。福岡県境に近いみやき町坂口の畑では、青々としたさちかおりが風に揺れていた。

 松永さんは「栽培方法を模索しながら、パン用小麦にしては収量もあるので面白い」と話す。パン用小麦には加算金が付くため所得アップにもつながる。「努力して求められる品質のものをより多く作るのが農家の仕事。佐賀だけで栽培されている今のうちにさちかおりの名を広めていく動きも必要」と課題を挙げる。

 知名度が低く生産量も多くないため、取り扱う店舗はまだ少ない。佐賀市の長崎自動車道金立サービスエリア下り線にあるパン店「バンテルン」は昨年12月から、さちかおりを使ったフランスパン(290円)を販売している。

 「昨年水害があり、県産の材料を使っていこうと導入した」と店の担当者。香りが良く、珍しそうに買っていく人もいるという。同店は高速道に乗らなくても利用可能で、担当者は「地元の人に食べてもらいたい」と話す。このほか東京・渋谷のパン店でも好評を博している。

 さちかおりの名前は、パンの香りにあふれ、幸豊かな食卓が日本中に広がることを願って付けられた。佐賀発のフランスパン用小麦が革命を起こし、日本の食卓を席巻する日が訪れるかもしれない。

(北島剛)

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