こんな東京、見たことない 外出自粛で人通り激減…戸惑う人々

西日本新聞 一面 湯之前 八州 川口 安子 下村 ゆかり

 新型コロナウイルスの拡大を阻止しようと、東京都など首都圏の知事が住民に要請した週末の「外出自粛」が28日、始まった。例年なら春休み中で、にぎわいに包まれる都内の繁華街や行楽地を静寂が覆い、異例の空気に-。都内や千葉県で最多の感染者が確認され、新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言が「瀬戸際」(安倍晋三首相)となったこの日。がらんとした街を行く人々の顔には不安と戸惑いが張り付いていた。

 「ここまでガラガラの原宿、見たことがない」。28日、都内の原宿・竹下通りで出会った足立区の高校2年の女子生徒(17)は息をのんだ。若者に人気のクレープ店や雑貨店が並び、普段の週末は行き交う人の肩がぶつかるほどの商店街。だが、休業した店こそ少ないものの、人出は例年の2割程度まで減っていた。

 小池百合子東京都知事は、特に若い世代に外出自粛を呼び掛ける。感染しても症状の軽い人が多いとされ、ウイルスを広げてしまう可能性があるからだ。マスクを着用したこの女子生徒は都の自粛要請は知っていたが、「人が少ないほうが買い物しやすい」と考え、あえて訪れたのだという。

 近くの喫茶店の宮本悠輝店長(33)は、「昨年の春休みの週末と比べると、売り上げはたったの5%ですよ」とため息をつく。隣接する表参道地区の店舗と客の奪い合いが起きており、「あと1カ月、週末の外出自粛が続けば店を畳むしかないかも」。

 それでも宮本さんは、知事の要請を支持する。「海外の感染状況を見れば、今がギリギリの状況。要請でなく、命令に準じた強い外出制限もやるべきですよ」と提案し、「足りないのは営業補償。国や都は安心して自粛に従う環境を整えてほしい」と求めた。

 渋谷、新宿、銀座…。都内の繁華街は百貨店などが臨時休業したこともあり、いずれも閑散としてもの悲しいムードに。下町として知られる葛飾区亀有の商店街も同じだ。イタリア料理店の桜井俊輔店長(43)は、「いつもの昼時は満席だが、先週末は8割に減り、きょうは1割にも満たない」。アルバイトを1人減らして営業しているという。

 昨春は花見客でごった返していた台東区の上野公園も、前日の27日から満開の桜並木が立ち入り禁止となった。規制線の手前でカメラを構えていた男性会社員(44)は、人混みが写り込まない異空間のような桜の構図を狙い、「こんなチャンスは二度とない」とシャッターを切り続けた。

外出か自宅か…「不要不急」に悩み

 人々が特に迷いを覚えたのは、「不要不急の外出とは何か」だったようだ。

 この日、都内の大学生片山大吉さん(20)は祖父の米寿のお祝いだった。「祝宴を開いていいのかどうか、家族で随分話し合った」が、新宿駅近くのレストランで予定通り開いた。書店が集まる千代田区神田神保町で美術書の専門店を営む原敏之さん(49)も、「われわれの商いは不要不急の最たるものかもしれないと悩みながら、開店した」と話す。

 JR亀有駅近くのスーパーに立ち寄った足立区の鶴靖弘さん(76)は、鹿児島県出身。弟は福岡県に住んでおり、九州の感染状況も気に掛けていた。「東京のようにならないように、外出自粛などの対策を早めにとってほしいものです」

(湯之前八州、川口安子、下村ゆかり)

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