年が変わって3カ月が近い。ネズミは寂しかろ…

西日本新聞 オピニオン面

 年が変わって3カ月が近い。ネズミは寂しかろ。トラやイノシシなどと違って干支(えと)にまつわる話題を、人間がほとんどしてくれない

▼別の寂しさを子(ね)年生まれの人は感じているかもしれない。一つ前の子年はリーマン・ショックで今年は新型コロナ。気分を変えたくなる。違う世界に目を向けるのもよさそう。例えば古典落語の「ねずみ」

▼主役は江戸期の名工、左甚五郎。名奉行の大岡越前守忠相(ただすけ)と同様に落語の世界でも好ましい居場所を与えられた。奥州仙台で鼠(ねずみ)屋というおんぼろ宿に泊まり、貧するに至った訳を知って木彫りのネズミを作る、と噺(はなし)は展開する

▼秀逸なサゲはユーチューブか何かで味わっていただくとして、サゲにはネズミの相方として欠かせないネコが絡む。この落語とは関係ないがネコはどうして十二支に入っていないのか。現代の愛猫家の疑問に答える説としては…

▼昔々、山の神から「正月、1日にみんなであいさつに来なさい」と言われ、12匹(頭)の動物がその日にわれ先にと行ったが、ネズミから2日とうそを教えられたネコは参加し損ね、それからネズミを追い回し始めた、という話をよく聞く

▼落語の世界に戻る。「鼠穴」という噺もある。冷気をまぶした人情噺だ。火事の場面が怖い。時代が移っても火事の怖さは変わらない。火の用心。翻って世相が乾きがちな現代社会は、気の用心。人情の乾きにも落語はよく効く。

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