緊急経済対策 景気刺激より救済優先で

西日本新聞 オピニオン面

 国の2020年度予算成立を受け、政府は緊急経済対策の策定作業に入った。新型コロナウイルスの感染拡大に対応するものだ。

 景気刺激策として現金給付や商品券、消費税減税などが浮上しているが、感染の封じ込めが現在の最優先課題であり、時期尚早だろう。まずは感染拡大防止策に伴う経済・社会活動の萎縮で収入が激減した企業や世帯の救済に万全を期すべきだ。

 パンデミック(世界的大流行)により世界経済は急減速している。感染拡大を食い止めようと、多くの国が外出制限や渡航禁止といった措置を取った。国境封鎖などで人や物の往来が止まれば経済も動きはしない。

 国際通貨基金(IMF)によると、20年の世界経済はマイナス成長に陥る見通しだ。これはリーマン・ショック後の09年以来で、生産や雇用の回復に時間がかかる可能性もある。

 日本の状況も深刻だ。地域経済を支えてきた訪日外国人客はクルーズ船の運航停止などで2月は半減し、3月以降はさらに落ち込む見通しだ。九州でも観光地のホテルや旅館、貸し切りバス会社、飲食店、小売店などから悲鳴が上がる。

 イベントや外出の自粛は、爆発的な感染拡大を防ぐにはやむを得ない。ただ、この事態が長引けば、事業停止に追い込まれる中小零細企業や力尽きる個人事業主が続出する恐れがある。そこに手を差し伸べ、雇用や生活を守るセーフティーネットこそが今求められる。

 政府が優先すべきは、雇用調整助成金の要件緩和や運転資金の融通、収入が途絶えた個人事業主への当面の生活資金貸し付けといった、目の前の危機を乗り切るための対策である。

 政府の3月の月例経済報告から景気の「回復」の文字が消えた。自動車の減産も始まった。アベノミクスの成果を前面に掲げてきた安倍晋三首相が「経済をV字回復させねばならない」と焦るのも無理からぬことだ。

 リーマン後の事業規模56兆円を上回るよう対策を積み上げるのが政府の既定方針のようだ。与党に加え野党からも大規模な対策を求める声が上がるが、こうした規模ありきの議論には違和感が拭えない。

 不要不急の外出を控えるように要請しながら、一律の現金給付や旅行券などで消費を喚起するのはブレーキとアクセルを同時に踏むようなものだろう。優先順位を誤ってはならない。

 爆発的な感染拡大による「医療崩壊」を防ぐため、宿泊施設を感染者の収容に活用するアイデアもある。感染の封じ込めと生活支援を軸に、いま必要な対策を練り上げてほしい。

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