「ノー残業デー」…北九州の中学校が実践する教職員の働き方改革 

西日本新聞 くらし面 竹次 稔 東 祐一郎

北九州市の挑戦-業務改善(下)

 校舎に入ってまず目につくポスターがある。

 「ノー残業デー」「定時退校日」「留守番電話」

 赤字で記されたキーワードは取り組みを着実に進めようという決意の表れだった。北九州市小倉北区の霧丘中(教職員45人、生徒644人)は、学校にありがちな前例踏襲との決別を目指し、教職員で積み上げた業務改善プログラムを書き出して玄関に掲示している。

 毎週水曜日の「ノー残業デー」は従来の努力目標から、少なくとも第1、第3週は午後6時までの定時退校を「義務」付けた。平日の学校の留守番電話設定は午後7時ごろからとしているが、水曜は午後5時からとした。さらに「平日は遅くとも午後8時の退勤を目指す」「午後からの出張時は直帰する」など、昨年4月に策定したプログラムには具体的な内容が並ぶ。

 策定を担ったのは田中彰一教頭(49)。実効性ある取り組みを呼び掛ける田中さんは、教員から当初「(残業も)生徒のためにやっている」「むしろ教員を増やしてほしい」などと言われた。それでも、現状を変えるため一人一人と粘り強く語り合ったという。

 PTAにも協力を求め、本年度から教員が加わるPTAの活動を減らした。「教職員の業務改善を進めるには保護者と地域への丁寧な説明と理解が不可欠だ」と田中さん。学校の方針と取り組みを「見える化」した玄関のポスターには、そんな狙いもあった。

 中学校教員の働き方改革の議論で必ず取り上げられるのが部活動だ。北九州市教育委員会は、昨年4月から平日と土日に、それぞれ1日以上の休養日を設け、週2日以上休むよう各学校に通知している。今年2月には参加する大会を精査することなどを盛り込んだ新ガイドラインを策定し、新年度はさらに見直す。

 霧丘中は昨年5月に独自のマニュアルを作成。部活動の顧問は、週末の予定を教職員で共有する掲示板に書き込み、決まり通りに休んでいるか互いに確認できるようにした。

 同校の生徒の約7割は部活動に参加している。もちろん「生徒に思いっきり部活動に打ち込ませてあげたい」と、熱意を抱く教員や保護者は少なくない。それでも運動系、文化系のいずれの部活動も、その過熱ぶりが指摘されるなどした結果、改善に向けた流れができた経緯もある。

 剣道部顧問で教務主任の野口圭一さん(43)は同校の新たな取り組みを実践。「剣道部の男子は地区大会を勝ち抜いて県大会に出場するなど成績は落ちていない。限られた時間の中で集中して練習できている」と手応えを口にした。

 昨年12月、同校の職員室に教員の平均残業時間が張り出された。「2018年11月 52時間46分→19年11月 45時間49分」。業務改善の初年度で約7時間の効果があった。

 昨年の改正教職員給与特別措置法(改正給特法)の成立で、公立学校教員の勤務時間を年単位で調整する「変形労働時間制」の導入と、残業時間を「原則月45時間、年360時間」とする上限(20年4月より)が設定された。

 現状では上限をわずかに超えているが、2年生の社会科を担当する野口さんは、土日のうち1日は休める上に、水曜日は定時退校で「リフレッシュできている」という。余力で発表資料作成ソフトを使った、分かりやすい歴史の授業などの教材研究も進める。

 また、教員でもある妻に任せっきりだった家事も、この1年で分担が進んだという。「仕事をやりくりして早く帰れる人ができる人。そんな意識が定着してきた」と野口さんは強調する。現場にじわりと浸透する北九州市の挑戦。その真価が問われるのはこれからだ。

 (竹次稔、東祐一郎)

■業務内容の一部は支援スタッフ代行 部活の引率にも外部人材

 北九州市教育委員会は教員の業務改善のために現場支援の取り組みを強化している。中でも教員の事務作業を手伝う「スクールサポートスタッフ」(SSS)は、授業の準備などに追われる教員の評価が高い。

 SSSは2018年度に導入。現在は市内の小中97校に1人ずつ派遣しており、来年度はさらに16人増員する計画だ。

 導入校の一つ、同市小倉南区の菅生中(教職員35人、生徒432人)では、SSSが平日の午前8時半から4時間勤務し、教員が担ってきた印刷や資料仕分けのほか、掲示物の張り替えなどを肩代わりしている。

 同校は業務改善のモデル校。勤務時間が長かった教頭業務の見直し、会議の効率化、保護者アンケートの集計電子化などに取り組んでいるが、SSSの活用は特に効果的という。吉津貴昭教頭(49)は「業務の負担軽減を実感している」と評価する。

 市教委はほかにも、各学校とやりとりする文書を削減し、中学校の部活動の顧問教員をサポートする「部活動指導員」を17年度に導入。教員以外の人が技術指導や引率業務ができ、現在28人が在籍している。

 また、ほとんどの授業を担任が担う小学校教員の負担軽減のため、一部教科を専門に教える教員を配置する「教科担任制」にも力を入れている。

PR

教育 アクセスランキング

PR

注目のテーマ