大分から岡山へ270キロ飛来 閉校のメッセージ風船が生んだ交流

西日本新聞 くらし面 四宮 淳平

 新型コロナウイルスの感染を防ぐため、全国の学校で臨時休校が決まって間もない1日、大分県国東半島の小学校で参加者も時間も縮小した閉校記念式典が開かれた。同県国東市立武蔵東小。創立147年の終幕を盛大に執り行う計画は流れた。それでも閉校をきっかけに新たな交流も生まれた。その象徴は、校庭の片隅から子どもたちの未来を見守り続ける。

 同校は1873(明治6)年、「古市学校」として開校。その後も校名を変えながら存続してきたが、地域の子どもの数が減ってきたこともあり、近くの武蔵西小、武蔵中と統合、今年4月から小中一貫の義務教育学校「志成学園」に生まれ変わる。

 武蔵東小の子どもたちは、昨年あった最後の運動会で閉校を知らせるメッセージ付きの風船を飛ばした。その一つが約270キロ離れた岡山県和気町まで届き、地元の木庭倍子さん(75)の元へ。人口約1万4千人の同町でも学校の統廃合が進み、子どもの姿を見る機会が減ったという木庭さんは、メッセージを受け取り「人生の中のうれしい事の一つとして大切に取っておきます」と書きつづった手紙を同校に送った。

 今度は子どもたちの番。風船が岡山まで届いた驚きや手紙のお礼のほか「この土地が気に入ってます」「夏には涼しい風が吹きます」と日常を記して送った。

 木庭さんは子どもたちの豊かな感性に感動し、何度も読み返した。閉校式にも招待されたが遠隔地のため断念。ただ、気持ちを形にしたいと思い、フクロウの小物を手作りして172人の全児童に贈った。「こんな風に人との絆が生まれるとは。心に灯がともったよう」と声を弾ませる。

 1日の閉校式に併せて校庭にお目見えした記念碑。碑の上には白いフクロウの像がちょこんと座る。糸永敏明校長(58)は「この学校はたくさんの方々に支えられてきた。子どもたちには素直さや謙虚さを持ち夢に向かってほしい」。真新しいフクロウは、あるじのいなくなった校舎を優しく見つめていた。

 九州7県では今春、少なくとも計55校の公立小中が閉校する。 (四宮淳平)

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