はまると抜けられない、男も惚れる声… 自信持って選んだ落語家二人

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(85)

 2010年に始めた「佐世保かっちぇて落語会」は、8月の「春風亭一朝・一之輔親子会」で20回目を迎えました。それと以前住んでいた軽井沢で企画して立ち上げたのが「信州ずくだせ落語会」。始めたのは11年の秋。「東日本大震災復興小さな支援」として入場収入の一部を毎年寄付しています。ささやかですが。今年10月の9回目は入船亭扇遊・林家正蔵の両師匠が高座に上がります。

 ちなみに「ずくだせ」とは、信州の言葉で「精を出して頑張ろう」「元気出せよ」という意味です。その記念すべき1回目の噺家(はなしか)さんが瀧川鯉昇(たきがわりしょう)と柳家喜多八。どちらも玄人筋が認める実力派。喜多八さんとは佐世保ではなく、信州で会ったのが最初です。橋渡ししてくれたのが鯉昇さん。

 すでに「かっちぇて」に出てもらい、親しくなった鯉昇さんに紹介を依頼しました。私がいたテレビのお笑いの世界と違い、多くの噺家さんは芸能事務所には所属せず、ほとんどが個人営業の一匹狼(おおかみ)。ですから先輩や同格の噺家さんに話をして筋を通すのが礼儀と考え、鯉昇さんにつないでもらい、喜多八さんに出演依頼したところ快諾を得ました。

 鯉昇さんはひょうひょうとしたおかしみがあり、古典落語に現代的なナンセンスギャグを挟む高座の面白さは鯉昇ワールドと呼ばれていて、はまると抜けられません(笑)。物腰も柔らかく、面倒見が良く弟子も10人以上抱えています。5月には元暴走族総長の瀧川鯉斗が真打ちに昇進。落語で見事に更生させました。

 そして喜多八さん。自身のキャッチフレーズは、「清く 正しく 美しく」のあの有名歌劇団のフレーズをもじって「清く けだるく 美しく」。その通りに開口一番、「やる気がないわけじゃないんです。ただ虚弱体質なんで」とけだるそうに始めるのですが、だんだんと話に熱を帯び、観客を引き込みます。

 酸いも甘いもかんでかんでかみ砕いたような渋みのある表情と、男も惚(ほ)れる低い声。いま最も面白いとされる柳家喬太郎も敬愛するほどで、人情話も滑稽話も上手(うま)くて面白い。古典落語「親子酒」を聞くと、本当に酒の匂いを感じて酔っちゃいそうで。この人を落語会に呼びたいと思ったのは、そんなたくさんの理由から。お笑いを中心にした世界で長年やってきた私。面白いかどうか、かぎ分ける嗅覚には自信があります。当たりでした。

(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

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 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年09月26日時点のものです

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