ロールスロイスでやってきた子犬 生家は世界的ミュージシャンの豪邸

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(93)

 皆さん、最近映画をご覧になりましたか。私は映画も好きで、大学時代は東京の安い名画座で鑑賞していました。

 「ロケットマン」をご存じですか。北の将軍に米大統領が付けたニックネーム。いや、そっちのロケットマンではなく、世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンを描いた映画です。彼はナイトの爵位を持っているそうですね。

 で、話は変わりますが、軽井沢で生活していた頃に愛犬ボーイが死にました。「息子」がいなくなった生活は悲しくてさびしくて、沈みっぱなしでした。いわゆるペットロスです。

 ボーイとの思い出をつづった本を書いたところ、仕事仲間から「もう一度犬を飼ってみては」と勧められました。猛プッシュしてきたのは、イリュージョニストのプリンセス天功さん。2007年に彼女が企画した東京の舞台、笑劇「地獄八景」-あの世も、この世も、イリュージョン-の脚本を私が書きました。

 互いに犬好きで、本を読んだ彼女から優しい手紙を頂きました。そして「また飼ってはどうですか。お友達から子犬をもらえますから」と。まだ立ち直っていなかったので、とてもそんな気にはなりません。

 ある日、舞台の稽古中に天功さんが私に耳打ちしました。「わんちゃんが成田(空港)の検疫所にいるので連れて行きます」。「えっ、お友達って外国の人なの?」「ええ、イギリス人で。その人から送ってもらいました」。強引さに困りましたが「とりあえず見るだけ」と伝えました。

 数日後、事務所の社長が運転するロールスロイスで天功さんがわが家に現れました。さっそうと降りた彼女の胸には、ボーイと同じイングリッシュコッカースパニエルの子犬が。

 それを見た妻はもうメロメロ。天功さんは「プレゼントします」と言って、消えるように去って行きました。あのイリュージョンのような出来事から12年。もらった犬はボーイの分まで長生きしています。

 さて、天功さんに子犬を送ったイギリスのお友達はと言うと、これがなんと、あのエルトン・ジョン。私たちがもらったのは、ロケットマンのとこで生まれた犬だったのです。天功さんが知り合いってのも驚き。エルトン・ジョンの豪邸にいればセレブだった犬は、日本の西の端にある佐世保の貧邸で暮らしています。名前はレディです。ワン。

(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

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 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年10月05日時点のものです

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