トップクラスの噺家が熱演する落語会 良心的な値段で続けるわけ

西日本新聞

放送作家・海老原靖芳さん聞き書き連載(97)

 私が主宰する「佐世保かっちぇて落語会」は指定席2500円、自由席2千円で、小中高生は指定席も自由席も千円です。毎回トップクラスの噺家(はなしか)さんたちが熱演してくれる内容からして「良心的な値段ですね」と言われますが、私なりの思いがあります。

 この連載の始めの頃に話しましたが、私の3人の親たち(父と育ての母と産みの母)は敗戦後に朝鮮半島から引き揚げ、貧しい暮らしをしていました。そんな親たちに、たまには日々の苦労を忘れて一緒に落語で笑ってほしかった。と毎回思っていて、たとえ乏しい収入でも、年に1度くらいは行けるであろう料金にしているんです。ですから、良心的な値段ではなくて「両親的な値段」。

 それともう一つ、宮沢賢治風に言えば「雨ニモマケズ、風ニモマケズ、増税ニモ、少ナイ年金ニモマケズ、真面目ニ生キテイル人タチガ、楽シメルヨウナ、ソウイウ落語会デアリタイ」のです。両親と子ども1人だと、指定席なら3人で6千円。1万円あれば、終演後に家族で食事ができるでしょう。故郷佐世保に親子で落語を楽しむ習慣が根づいてほしいのです。

 ある時、CDで落語を聞いていたら、6歳か7歳くらいの子どもの笑い声が入っていました。そのCDは古今亭志ん生名演集全41巻の9巻目にある「妾馬(めかうま)」。1959年、昭和34年の録音です。

 当時、私は6歳。笑い声の子どもは同じくらいの年でしょうか。想像してみました。この家族は寄席の後に、おいしいものを一緒に食べていたのかも。決して高級な店じゃなく、チキンライスとかライスカレーと書かれた木札のメニューが壁に掛かっている店で。

 落語を思い出しては笑顔、食べては笑顔、飲んでは笑顔、話して笑顔。ああ私もこの子のように、親たちと一緒に落語で笑いたかったなあ。

 そんな気持ちで続けている「かっちぇて落語会」の6回目の終演後、こんなことがありました。楽屋に見知らぬ中年男性が訪ねてきました。短髪で中肉中背ながらも、何となく武闘家の雰囲気があって、妙に思い詰めた様子。殺気すら感じて私は身構えました。

 さて読者の皆さん、ここで3択問題です。この男性は①落語会がつまらなくて殴りにきた②一人っ子のはずの私の弟だった③落語会に感動して握手しにきた-のどれだったでしょう。

 真相は、次回明らかに。 

(聞き手は西日本新聞・山上武雄)

………………

 海老原靖芳(えびはら・やすよし) 1953年1月生まれ。「ドリフ大爆笑」や「風雲たけし城」「コメディーお江戸でござる」など人気お笑いテレビ番組のコント台本を書いてきた放送作家。現在は故郷の長崎県佐世保市に戻り、子どもたちに落語を教える。

※記事・写真は2019年10月10日時点のものです

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