職場の電話応対が怖い新入社員 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

連載:吃音~きつおん~リアル(18)

 会社員の男性(24)が「職場で電話応対ができなくて困っている」と、私がいる九州大病院吃音(きつおん)外来を訪れました。

 どこの職場も同じだと思いますが、固定電話が鳴ると新入社員が積極的に取らないといけません。ところが、男性は呼び出し音が鳴るたびに顔が紅潮し、冷や汗が出て、心臓の鼓動も速くなります。「第一声が出るか」と強い恐怖を感じるのだそうです。

 やっと受話器を取れても、会社名と自分の名前を名乗らなければいけないのに、最初の一言が声になりません。そのうち、電話の向こうから「もしもし、もしもし」とせかされて焦ってしまい、無言で切ったこともあるようです。同じ部署の先輩や他部署にうまく取り次げないという失敗も重なって、次第に電話の音が鳴るだけで怖くなったといいます。

 受診をきっかけに辞職覚悟で上司に相談しました。すると、机の上にあった電話を撤去してもらえたそうです。

 思春期以降、吃音がある人は他人に分からないように、言いにくい言葉を言いやすい言葉に変換しています。学校や社会に適応するため、表面上の吃音を軽減する努力をしているのです。

 しかし、言い換えできない場面が時々あります。その一つが自己紹介です。漫画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(押見修造著)をご存じですか。主人公は高校入学後の自己紹介で、自分の名前を言えない女子高生。2018年に映画化され、注目を集めました。

 社会人になって最も苦手になりやすいのは、電話です。電話応対に自信を持てるまで時間がかかります。普段流ちょうに話している人でも「吃音があるので、電話の応対を代わってほしい」という申し出があった場合は、手助けしていただけるとうれしいです。

 (九州大病院医師)

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