日韓交流「今こそ」奮闘 知られざる観光情報配信やイベント企画

西日本新聞 国際面 前田 絵

 日韓関係の悪化や新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、国境を越えた人の往来が激減する中、韓国釜山市を拠点に日韓交流に取り組む人々が奮闘している。知られざる釜山の観光情報を動画投稿サイトで発信したり、体験型イベントを企画したり…。両国間を覆う重苦しい空気を民間の力で吹き飛ばそうと「自分たちにできる何か」に挑戦し続けている。 

釜山拠点の団体「できることを」

 1日午後、釜山市中区の事務所。日韓交流に取り組む社団法人「ぷさんさらん」のメンバー8人が釜山、ソウル、大阪、京都を結ぶテレビ電話で、今後の活動について意見を交わした。

 会社社長、留学生、韓国語講師など、メンバーの肩書はさまざま。新型コロナウイルスの影響を考慮して、4月に福岡市で予定していた行事や6月の釜山バスツアーの延期を決めたが、8人は「マイナスをプラスに変え、新しいものを生み出す思考が大事だ」「視聴者に何を提供できるのか考えよう」と前を向く。会議では視聴者とテレビ電話でつないで開く「リモート飲み会」などの案も飛び出した。

 ぷさんさらんは2015年6月、釜山市で貿易会社を営む昆雅之代表(46)や韓国語講師の斉藤優さん(29)が中心になって始めた日韓学生交流会をきっかけに、非営利団体としてスタートした。名称は韓国語の「愛(サラン)」にちなみ、国際交流、釜山の観光情報発信、ボランティアを活動の柱に据える。

 同年8月に動画投稿サイト「ユーチューブ」に「わぼいそ釜山」のチャンネルを開設。ガイド本に載っていないような飲食店や観光名所などを楽しく紹介する動画を配信している。配信数は270本を超え、チャンネル登録者数は6万人を突破した。メンバーの一人で、筑豊なまりの日本語を操る金賢珍(キムヒョンジン)さん(36)は「動画を通じて地元の釜山を好きになってくれる人が増えるのはうれしい」と行きつけの店に案内する。

 視聴者参加型のイベントも人気だ。昨年6月の釜山バスツアーには日本人37人が参加した。郊外の島や市場を巡り、貸し切りヨットのクルージングを満喫。夕食には韓国人の視聴者も駆けつけ、新たな交流が生まれた。日韓関係の悪化が際立った8月には「自分たちがやれることをしよう」と観光スポットの民楽水辺公園でのごみ拾いを呼びかけ、日韓の25人が一緒に汗を流した。

 活動の功績を認めた釜山市は昨年3月、昆代表に名誉市民証を授与。同11月には自治体の補助金などが活用できる社団法人の認可も受けた。今後は言葉の違いを超えて楽しめる音楽やスポーツを通じた交流も企画したいと考えている。

 昆代表は「日韓は地理的に近いがゆえに歴史的な摩擦もあるが、近いからこそ気軽に付き合える関係を築けるよう、国際交流のハードルを下げていきたい」と話す。

グルメ紹介の動画人気 ユーチューバー韓国人カップル

 釜山市内の飲食店などを日本語で紹介する動画を配信し、ネットを通じて日韓交流を楽しむ韓国人カップルがいる。ウギさん(29)=本名チョヒョンウク、同市=とチョイさん(33)=本名崔敬善(チェギョンソン)、光州市=だ。2人は動画投稿サイト「ユーチューブ」に「たび男女」というチャンネルを開設。ほのぼのとした会話を交わしながら、ご当地グルメなどを紹介している。

 大学で日本語を専攻したチョイさんと、独学で磨いたウギさんは「旅行好きな日本人と友達になりたい」と2018年10月に動画配信をスタート。飲食店の紹介だけでなく、注文時に使える韓国語レッスン、ホテルで出前を頼む方法など、旅行者視点の動画も人気だ。チャンネル登録者数は1万人未満だが、日本人旅行者に街で声を掛けられることも増えてきたという。

 昨夏以降、日韓関係の悪化は続くが、2人は「国対国ではなく人対人の関係が大切だ。日本が好きな韓国人と、韓国が好きな日本人との間で良い関係を維持したい」と関係改善を待ち望んでいる。(釜山・前田絵)

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