科学鑑定、確定判決にメス 「冤罪の構図」見極め必要

西日本新聞 社会面 鶴 善行

 大崎事件の第4次再審請求で、弁護団は救命救急医による新たな鑑定書などを提出し、改めて原口アヤ子さんの無実を訴えた。死因や犯行態様を認定する上で重要な根拠となる科学的な知見は、他の再審請求事件でも確定判決に疑義を突き付けてきた。

 2003年に湖東記念病院(滋賀県)で起きた入院患者の「呼吸器外し事件」では、元看護助手の西山美香さんが「呼吸器を外した」とした自白が有罪の大きな根拠となった。しかし第2次再審請求の大阪高裁決定(17年)は、新たな医師の意見書などを踏まえ、死因は「致死性の不整脈による自然死の可能性がある」と判断。自白についても虚偽の可能性があると疑いの目を向けた。

 茨城県で男性が殺害された1967年の「布川事件」でも、元被告2人=再審無罪が確定=の当初の自白に基づく殺害方法が覆った。確定判決では手で首を押さえつけた「扼殺(やくさつ)」。ところが新たな法医学鑑定を基にした水戸地裁土浦支部決定(05年)は「(下着による)絞殺の可能性が高い」として再審開始を認めた。

 捜査当局が犯行ストーリーを描き、鑑定と自白や関係者供述とのつじつまを合わせていく-。再審開始が認められた各事件を通して見ると、冤罪(えんざい)が生み出される構図も浮かび上がる。

 大崎事件でも「タオルで首を絞めたことによる窒息死」と認定した確定判決は、何度も揺らいできた。

 第1次請求の鹿児島地裁決定(02年)と3次請求の福岡高裁宮崎支部決定(18年)は、弁護側が新証拠として提出した法医学鑑定を基に「遺体に絞殺の痕跡は認められない」「死因は転落事故による出血性ショック死だった可能性が高い」と指摘。原口さんとの共謀を認めた親族の自白の信用性も崩れていた。

 千葉大大学院法医学教室の岩瀬博太郎教授は「日本の法医学は組織化されておらず、鑑定結果がばらつく傾向にある。裁判では鑑定の客観性、科学性が保たれているのか見極める必要がある」と指摘する。 (鶴善行)

鹿児島県の天気予報

PR

鹿児島 アクセスランキング

PR

注目のテーマ