「ばかにしている」雇い止めや賃金不払い コロナ拡大、働き手を直撃

西日本新聞 河野 賢治

 新型コロナウイルスの感染拡大で、働き手の雇用や賃金に影響が出ている。業績悪化で非正規労働者が雇い止めを告げられたほか、学校の休校などで仕事を休んだ人に賃金が支払われない例も。個人で加入できる労働組合「連合福岡ユニオン」(福岡市)の寺山早苗書記長と、ユニオンに届いた相談から問題点を考えた。

 航空関連会社に勤める60代前半の男性は3月上旬、今秋以降の雇い止めを告げられた。60歳の時に同じ勤務先で定年を迎えた後、有期契約社員として再雇用され、働いてきた。

 だが、感染拡大で旅客便の利用が減り、会社は減便を決定。その数日後、次回の契約更新をしないと言われた。続けて働くことを望んでおり、「労働者をばかにしている」と相談した。

 2013年改正の高年齢者雇用安定法は、労働者が望めば65歳まで雇用するよう企業に義務付けている。労働契約法も、過去に繰り返し契約を更新されていたり、継続雇用への期待に合理的な理由があったりする有期契約社員について、雇い止めを認めていない。

 男性はまだ65歳になっておらず、定年後は1年ごとに契約を結び直してきた。寺山書記長は「男性の場合、次も契約が更新されると期待するのは合理的。雇い止めを回避する努力が尽くされなければ、会社の対応は無効となる可能性がある」と指摘した。

 男性には継続雇用を望む意思を示すことと、会社側に理由書を出すよう求めることを助言。その上で対応を検討するという。

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 学校の休校に伴い、子どもの世話で仕事を休んだ親に対して、特別な有給休暇を与えた事業主に助成する新制度の相談もある。事業主が支払う賃金に対し、国が日額8330円を上限に助成する形だが、「会社が制度を利用してくれない」という訴えだ。

 運送会社勤務の50代女性は、休校中に子どもの世話で仕事を休んだところ、「その分の給料は払わない」と言われた。国の助成制度を利用するよう頼んだが、「手続きが分からない」と対応してもらえなかった。

 制度の利用は、事業主が年次有給休暇(年休)と別に特別な有給休暇を設けることが条件。就業規則に定めなくても要件を満たせば対象になるが、企業が手続きの負担を嫌って利用しない恐れが指摘されていた。

 ユニオンは対応として、賃金が支払われる年休を取得するよう女性に助言した。寺山書記長は「労働者が休校による子どもの世話で休んだことを証明すれば、簡易な手続きで直接、賃金が給付される仕組みが必要」と呼び掛ける。

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 出勤停止を求められた期間の賃金が支払われるのか、不安視する相談も多い。

 「体調不良で病院に行ったが、感染の有無を調べるPCR検査をしてくれない。陰性と証明されるまで出勤しないよう言われた」(介護施設勤務、30代男性)、「デイサービス事業所で運転手をしているが、利用者が激減し、1週間休みになった」(派遣社員、50代男性)、「講師をしている学習塾が休みになり、給料が支払われない」(非常勤社員、20代男性)

 労働基準法は、使用者側の都合で従業員を休ませる場合、その間の休業手当(平均賃金の60%以上)を支払うよう定める。さらに国は今回、感染拡大の影響で従業員を休ませた事業主に雇用調整助成金を支給し、休業手当や賃金支払いに充ててもらう特例も始めた。

 休業手当は正規、非正規労働者を問わず支給されるが、ユニオンには今回に限らず、普段から未払いの訴えが寄せられている。行政の周知や指導を強める必要もありそうだ。

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 「フリーランスで幼稚園の英語の講師をしているが、園が休みになり、収入がなくなった」(30代男性)との声もあった。

 フリーランスなど個人で業務を請け負って働く人は、休校による子どもの世話で仕事ができなかった場合、新制度で日額4100円が国から支給される。これ以外でも政府は、低所得世帯向けの「生活福祉資金貸付制度」の対象を、感染拡大で収入が減った人に広げ、一部の貸付額を10万円以内から20万円以内に引き上げた。

 ただ、感染が収まらずイベントの自粛などが長引けば、こうした人の生計が行き詰まる恐れはある。

 ユニオンには、事業主からも「給料を支払うのが難しい」「取引先から契約を打ち切られた」と業績悪化の相談が寄せられ、行政の窓口などを紹介している。感染拡大は労使双方を直撃している。

 寺山書記長は「労働者で勤務先に労働組合がないなど、事業主と交渉するのが難しい場合は相談してほしい」と語る。連合福岡ユニオン=092(273)2114。 (編集委員・河野賢治)

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