行動自粛どう呼び掛ける? 識者「日本は表現があいまい」

西日本新聞 本田 彩子

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、各国首脳が国民に向けて発信するメッセージが注目を集めている。有効な治療法がなく、国民に行動制限を求めるしかない現状では、心に響く首脳の「言葉」は大切だ。各首脳のキャラクターの違いも透けてくる。

 「何より子どもたちの健康、安全を第一に考えた」。2月27日、安倍晋三首相は全国の小中高校などに一斉休校を要請した。評価は相半ばしているが、唐突な発表に現場は混乱。「私の責任で判断した」として、根拠を十分説明しなかったことにも批判が集まった。

 同様に休校要請をしたデンマークのフレデリクセン首相は、当事者である子ども向けにオンラインで会見を開いた。「外で遊んでも大丈夫ですか」「70歳のおばあちゃんは感染したら死ぬの?」-。子どもたちの質問に一つ一つ答える様子はテレビで3月13日に放送された。在日デンマーク大使館によると、フレデリクセン氏は就任時、「私は子どもたちのための首相になりたい」と述べたという。

 北海道大公共政策大学院の鈴木一人教授(国際政治)は「なぜ学校に行けないのか、なぜ家にいなければいけないのか、子どもが抱える不安やストレスをしっかりケアした会見」と高く評価。「政治において最も大切な説明責任を果たしている。全ての国が行うべきことだ」と話す。

 同18日、ドイツのメルケル首相が行った演説も会員制交流サイト(SNS)を中心に拡散している。メルケル氏は入国制限などについて、旧東ドイツ時代の経験に照らし「移動の自由を苦労して勝ち取った私のような人間にとって、こうした制限は絶対に必要な場合にのみ正当化される」と述べた。医療従事者の他、買い占めに対応するスーパーのレジ係や商品の補充係に感謝の気持ちを述べた点なども支持されている。

 鈴木教授はメルケル氏の演説に関し、科学的根拠に基づく発言が多い点にも注目する。「根拠のある正確な情報を伝えることで国民の信頼を得ている」。対照的な例に、米国のトランプ大統領が「4月12日の復活祭までに経済活動の自粛を緩和する」とした発言(後に撤回)を挙げる。「国民に希望を持たせることは大事だが、科学的な根拠がない。偽りの希望を持たせることは事態を悪化させる」

 国民性や政治家への信頼度は国によって異なる。鈴木教授が重視するのは、国民の共感を得る「キーワード」の発信だという。

 フランスのマクロン大統領は、全土での外出制限を表明した会見で「(ウイルスとの)戦争状態」という言葉を使った。鈴木教授は「国民の行動を制限するときには、危機的な状況が一瞬にして共有されるメッセージが大切。日本の政治家はあいまいな表現が多く、これといったキーワードがない」と話した。 (本田彩子)

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