中国「マスク外交」躍起 支援で影響力 医療物資に不具合、誤算も

西日本新聞 国際面 川原田 健雄 川合 秀紀

 【北京・川原田健雄、バンコク川合秀紀】新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、中国が東南アジアや欧州各国への医療支援に力を入れている。世界の感染対策に貢献する姿勢を印象付ける一方、巨大経済圏構想「一帯一路」の推進に向け、中国に友好的な国際世論をつくる狙い。ただ、中国製の医療物資に不具合が見つかるなど「支援外交」はほころびものぞく。

 中国と国境を接しながら長く「感染ゼロ」が続いたラオス。3月24日に初の感染例が確認されると、中国政府はわずか5日後の29日に医療チームを派遣した。空港に出迎えたラオス副首相に、駐ラオス中国大使は「困ったときの友こそ真の友」と語った。先立つ23日には、カンボジアにも中国の医療チームが入った。

 中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)各国での情報発信にも力を入れる。在タイ中国大使館は25日、中国側から寄贈されたマスクや医療用防護服がタイに到着したと発表。インドネシアの首都ジャカルタの駐ASEAN中国大使は30日付のジャカルタ・ポストに「中国はASEANに恩返しの支援をする」との見出しで署名文を寄稿し、官民を挙げた支援を強調した。

 中国にとって東南アジアは「一帯一路」の重要地域。関連の大型インフラ事業が数多く計画されるが、感染拡大で停滞を余儀なくされている。中国の手厚い医療支援には、一帯一路がもたらす経済的恩恵が滞る中でも東南アジア各国をつなぎとめたい習近平指導部の思惑がにじむ。

 中国の支援は欧州にも及ぶ。死者が世界最多の1万2千人超に上るイタリアには3月中旬に医療チームを派遣。人工呼吸器など30トンの物資も空輸した。イタリアとは先進7カ国で初めて一帯一路推進の覚書を締結しており、さらに関係強化を進める構えだ。習氏はフランス、英国など各国首脳と相次いで電話会談。中国が支援を申し出た国は欧州を含め80カ国を超える。セルビアのブチッチ大統領は「欧州に団結は存在しない。助けられるのは中国だけだ」と述べ、欧州の足並みの乱れを露呈した。

 ただ、欧州では中国企業から購入した医療物資に相次いで不具合が判明。スペイン政府が迅速検査キット5万8千個を不良品として返品したほか、オランダ政府は中国製マスクのフィルター機能が基準を満たしていないとして数万枚を回収した。チェコなどからも苦情が出ている。相次ぐ不具合は「マスク外交」で影響力拡大を狙う習指導部の戦略に影を落としている。

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