「李下(りか)に冠を正さず」…

西日本新聞 オピニオン面

「李下(りか)に冠を正さず」。スモモの木の下で冠を直そうとすると、実を盗むのかと疑われる。人に疑われる振る舞いは慎むべし、という中国の古い戒めだ

▼令和の戒めは「桜下に羽目を外さず」。新型コロナの感染拡大で花見にも自粛要請。名所の東京・上野公園内も一部通行止めに

▼そんなご時世に、桜を背景にした集合写真が物議を醸している。その中心に満開の笑顔で写っているのは、国民に自粛を呼び掛けている安倍晋三首相の妻昭恵夫人だからだ。桜といえば、例年、首相が主催する「桜を見る会」が公私混同の批判を浴び、ことしは中止に追い込まれた

▼にもかかわらず、芸能人を招いての「私的桜を見る会」か、と疑われる一枚だ。首相は、公園の桜ではなく飲食店の敷地内なので「花見ではない」と。桜を見る会の参加者を「募ったが、募集ではない」と言い張った支離滅裂がここでも

▼森友学園の決裁文書改ざん問題で、自ら死を選んだ近畿財務局職員の手記が公となり、疑惑が再燃したさなかでもある。首相夫妻の関与を隠すための改ざんだったと、命と引き換えに告発しているのに、渦中の夫人が満開の笑顔とは

▼夫人は森友学園の小学校の名誉校長を務め、学園前理事長夫妻とも晴れやかな笑顔で写真に納まっていた。「李下に-」と同意の格言に「瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず」。夫人は「学園に履を納れていた」ことも、すっかりお忘れだろうか。

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