性犯罪の要件 被害者の視点で見直しを

西日本新聞 オピニオン面

 相手が積極的にイエスと言わない限りノーと解釈すべきだ-性行為を巡り、そんな世論が高まってきた。性暴力の裁判で、このイエスを限定的に捉える無罪判決が続き、被害者支援団体などが刑法改正を訴えている。

 法務省は一昨日、性犯罪の要件などを議論するため、法や心理学の専門家を中心にした検討会を設けた。性犯罪を厳罰化した2017年の改正刑法の付則で、施行3年後に性犯罪に関する施策を検討することになっていた。何より被害者の声に十分に耳を傾け、実態に即した結論を導いてほしい。

 日本では、性行為について「嫌なら抵抗するはずだ」という意識が社会や法律の前提になっているのではないか-。性犯罪の専門家や被害者支援団体の多くが指摘する点だ。

 実際、強制性交や強制わいせつなどの犯罪が成立する要件には、加害者が暴行や脅迫を用いて被害者を抵抗不能にさせることがある。「抵抗できたのに、しなかった」のなら犯罪にはならないと解される。

 この観点から注目を集めたのが昨年3月の名古屋地裁判決だった。実の娘に対する準強制性交罪に問われた父親に「娘は全く逆らえない状態とは言えない」として無罪を言い渡した。

 控訴審の名古屋高裁は先月、逆転有罪判決を下した。意に反する性的行為の繰り返しで、娘は抵抗する意思や意欲を失われていたと認定した。無抵抗がイエスを意味しないことを明確にした点で意義深い司法判断だ。

 性暴力に遭った際、恐怖で声さえ出なかったなどの体験が被害者の口から語られるようになってきた。支援者らが「抵抗不能」という要件の見直しを求めるのは理解できる。法務省の検討会でも主要な論点だろう。

 被害者は依然、声を上げにくい社会環境がある。好奇の目を向けられるなど二次被害に遭う可能性も否定できない。

 こうした現状に向き合おうと全都道府県に順次設置されたのが医療や適切な情報を提供するワンストップ支援センターだ。それでも相談を決断するまで1年以上かかった人は3割程度に上ることが、内閣府の初の調査で分かった。加害者は知人や職場関係者、親など身近な人が多い。被害者の1割ほどが男性である点にも留意したい。

 この問題の先進国であるスウェーデンは一昨年、積極的な同意以外は不同意と解釈してレイプ罪を適用する刑法改正を行った。罪の認定には、言葉や行動で同意が示されたかどうか、が特に考慮されるという。

 性暴力は「魂の殺人」と呼ばれる犯罪だ。その認識を社会全体で共有し議論を進めたい。

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