真偽不明の情報…感染者のうわさ、なぜ広まる?記者が考えた

西日本新聞 筑豊版

 福岡県飯塚市で新型コロナウイルスの感染者が確認されてから、感染者に関する真偽不明の情報がインターネット上で飛び交っている。人々はなぜうわさをし、どのように広まっているのか。筑豊総局の記者3人が、取材を通して感じたことを話し合った。

無関係の幼稚園名指し

 A 感染者は30代の夫婦で、未就学児の子どもがいる。子どもは検査の結果、陰性だったが、判明する前、「〇〇幼稚園に通っている」という誤情報が広まった。ツイッター上で見つけた投稿を、園名を隠して再現した。

 ■「〇〇幼稚園に通ってたみたいでおやすみになってたみたい」

 □(他ユーザーの返信)「お子さんはまだ小さく、どこにも通っていないということでしたよ」

 ■「え?ではなぜ〇〇幼稚園は休園だったんですか?」

 B 県が発表したのは24日夜。翌日には誤情報が広まったため、園は同日正午すぎ、保護者宛てにうわさを打ち消すメールを送った。飯塚市での感染確認を受けて自由登園にはしたが休園ではなく、ほとんどの子どもが通っている。

 A 園に娘2人を通わせる30代男性は、メールがすぐに流れたことで「安心できた」と話していた。早急な対応で、良い判断だったのでは。

 B ただ、うわさは広まり、さっき紹介したツイートは26日のことだった。

 A 県の発表を受け、メディアが「未就学児の子ども」と報じたことで、幼稚園と結びつけた人がいた。実際は幼稚園にも保育園にも通園していない。

 C 子どもを思う親の不安の強さが、うわさを増幅したのではないか。ある保護者は「行政もマスコミも情報が少ない」と話していた。情報量の少なさに対する不満を反映している一面もあった。

 A 園長は「聞きかじったことを信じてはならないし、尾ひれをつけてもならない」と強調した。

「大きく恐れる」心理

 A 居住地について、知り合いのある自営業の40代男性はa地区だという説を信じた。「言っている人が多かった」のが理由だそうだ。田川市の会社経営の50代男性は、b地区説をとった。「飯塚市民がそう言っているのだから、うのみにした」と振り返った。

 C b地区と聞いた30代男性は、不確定な情報と思いつつ、同地区に住む高齢の両親に「長時間外にいない方がいいかも」と伝えた。

 B 40代男性は、約20人が参加するライングループで特定の地名を挙げた。理由を聞くと「近くに住んでいる人は、より注意が必要と考えた。注意喚起のため。感染力が分からないので、どこに住んでいるかの情報は重要と思う」。

 C 感染経路の分からないケースが増えていることから、漠然とした不安を感じる人が多いのではないか。それが、居住地を知りたいという思いにつながっているのだろう。

 B 感染の強さや仕方などメカニズムが分からず、その情報も不足していると感じている人が多かった。必要なのは「正しく恐れる」と言うが、「大きく恐れる」になりがちな社会心理の一端も垣間見られた。

住民納得の情報発信を

 C うわさの書き込みが相次いだツイッター。地区名などを具体的に記した投稿をした約15人にツイッターを通じて、接触を試みたが、反応がなかった。実名が基本のフェイスブックでは、同様の投稿は見当たらなかった。

 B ツイッターの特徴は匿名性。匿名で投稿できるからこそ、知り得た情報を流したのではないか。そこに「取材」と言われると、現実感が増し、自分は偽情報で相手を傷つける「加害者」ではないか、と後ろめたさから、取材を嫌がったのではないか。

 A 心理学の専門家に、うわさが拡散した状況について尋ねてみた。

 新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)はツイッターでの拡散について「知人を助けるための行為であり、重要な情報を人に伝えられる心地よさもあるのではないか」と指摘。その上で、「地域の混乱を生み、かえってリスクを高めると理解してもらいたい」と注意を促した。

 行政に対しては「住民との間の、相互信頼関係に基づく適切なリスクコミュニケーションが求められる。必要な情報は出していて、感染の危険性とは無関係な情報だから出していないと、住民が納得することが必要」との見解を示した。

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