失業率上昇、トランプ政権「成果」失う 感染阻止優先の専門家に批判

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 【ワシントン田中伸幸】3月の米失業率が新型コロナウイルス感染拡大の影響で急上昇した。低失業率を経済政策の「成果」と誇示してきたトランプ大統領にとって株価急落に続く大打撃だ。トランプ政権は3月末に過去最大の経済対策を打ち出したばかりだが、早くも追加対策が問われる。支持層の間では、政権内で感染拡大阻止最優先を唱える専門家が経済再生の「足かせ」になっているとして解任を求める声が高まっており、政権の感染症対策に影響を与えかねないとの懸念も出ている。

 ワシントンで米国人留学生の海外渡航を支援する会社に勤めていた女性(26)は3月中旬の朝、解雇を通告された。感染拡大の影響で海外留学が不可能になり、覚悟はしていた。「でも突然すぎて…」。電話越しの声が震えた。

 当面の頼りは、3月末に成立した2兆2千億ドル(約237兆円)規模の経済対策だ。大人1人最大1200ドル(約13万円)の現金給付や失業保険の拡充が含まれており「2カ月先くらいまでは大丈夫だと思う」。

 だが、経済活動がストップする中、求人の多くは患者の急増に追われる医療分野。専門知識や経験がなければ新たな職探しは極めて難しい。月1500ドルの家賃も大家が支払い延期を認めるか分からない。失業により医療保険も失った。

 「失業保険の窓口に何日も電話をかけ続けているが全然つながらない」。行政の対応にも不満が募る。

■早くも追加対策

 11月に大統領選を控えるトランプ氏は、失業者の不安と不満が膨らめば自身の再選を危うくするだけに、焦りを隠さない。

 現金給付などの経済対策はまだ実行されていないが、すでに雇用増をにらんだ2兆ドルの大型インフラ投資など追加対策を主張している。野党民主党からも同調する声が上がるが、与党共和党には「まずは経済対策の効果を見極めてから」とけん制する動きもある。

 そもそもインフラ整備に伴う雇用が飲食業やサービス業に多い失業者の受け皿になるのか-。そんな疑問もくすぶる。

■脅迫や陰謀説も

 トランプ氏の熱烈な支持者からは、政府のコロナ対策チームの主要メンバーであるファウチ国立アレルギー感染症研究所長に厳しい視線が注がれる。

 ファウチ氏はほぼ連日、トランプ氏の記者会見に同席。外出自粛要請などを早期に緩和して景気浮揚を急ぎたいトランプ氏の話の腰を折るように、外出禁止令を全米で発令することを推奨するなど医学的見地から感染拡大阻止を重視する発言を繰り返している。

 民主党支持者らは危機を冷静に分析して対策を訴える姿勢を高く評価するが、保守層は「恐怖をあおっている」などと激しく批判。ファウチ氏が「ディープ・ステート(闇の政府)」と呼ばれる政府内の反トランプ勢力の一員で「再選阻止をもくろんでいる」との陰謀説まで唱え、トランプ氏に解任を促している。米メディアは、ファウチ氏の殺害を示唆する脅迫があったとして政府が警備を強化したと一斉に伝えた。

 再選に向けて熱烈な支持者の声は無視できない。一方でファウチ氏をはじめ専門家の処遇を誤れば世論の猛反発は必至。トランプ氏は対応に苦慮しそうだ。

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