「きのこ雲」映像、2機の撮影を編集していた 飛行ルートも解明

西日本新聞 一面 華山 哲幸

 長崎原爆のきのこ雲が湧き上がる状況を上空から捉えた米軍機撮影の唯一の映像は、爆弾を投下したB29と同型観測機の2機から撮影し、編集して1本にまとめたものだったことを長崎総合科学大(長崎市)の大矢正人名誉教授(73)らが突き止めた。どちらか1機からの撮影とみられていたが、雲の形状や背後の山容を解析し結論づけた。被爆の実相を伝える貴重な資料の新事実が判明し、大矢氏は「さらに詳細を明らかにしたい」と意欲を見せる。

 映像は約3分間。上空500メートルでさく裂した原爆による巨大な熱エネルギーが上昇気流を生み出し、地表面や大気中の微粒子が巻き上げられ、きのこ雲が瞬く間に高度4千~5千メートルに達する様子が写されている。

 爆撃機「ボックスカー」と観測機「グレートアーティスト」の2機は、太平洋に浮かぶ北マリアナ諸島のテニアン島から長崎上空に飛来。米国の物理学者ハロルド・アグニュー氏(1921~2013)が、両機の乗組員にカメラを託したことは分かっていたが、どちらの機体から撮影したかは判明していなかった。

 広島原爆の際には自身が観測機に乗り込み、きのこ雲を捉えたアグニュー氏は戦後、両方のフィルムを米スタンフォード大フーバー研究所に寄贈した。

 大矢氏らは14年に研究所からデジタル化された映像データを入手した。雲が膨れ上がる場面が2度連続して現れる点に着目し、原爆投下前の航空写真を基にした市街地の3D画像と照合。背後に映り込む岩屋山(475メートル)と雲の位置関係などを精査した結果、映像中にほぼ同じタイミングで別々の角度から撮影したシーンがあることから「2機による撮影」と判断した。

 さらに乗組員の証言や映像から、東方面から長崎上空に入ったB29は原爆投下後、反時計回りに旋回し、大村湾南岸を経由して五島灘周辺まで達したとの飛行ルートも導いた。

 戦後75年を迎え、当時の映像など貴重な資料の内容や意義を的確に後世に伝えることがより大切になっている。ともに研究し、長崎総合科学大大学院を修了した久松朋史さん(24)は「戦争を体験していない世代の想像力を補う資料になってほしい」と願う。 (華山哲幸)

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