英雄の功績を後世に伝えるため、いろんな部品を交換して永らえてきた船がある…

西日本新聞 オピニオン面

 英雄の功績を後世に伝えるため、いろんな部品を交換して永らえてきた船がある。構成する部品の全てが取り換えられたとき、果たしてその船は最初と同じ船と言えるのか

▼その名は「テセウスの船」。ギリシャ神話に由来するパラドックス(逆説)の一つ。「過去の殺人事件の塗り替え」と「家族の絆」をテーマに、3月まで放映された民放ドラマの題名である

▼テレビを見ながら鴨長明の「方丈記」が浮かんだ。<行く川のながれは絶えずして、しかも本(もと)の水にあらず>。例えば私たちが郷愁を寄せる故郷の川。流れる水は絶えず入れ替わり、今この瞬間の川は私たちが子どもの頃に親しんだのと全く同一の川ではない

▼同じことが人にも言えるのでは。人は成長して人格が形成されるにつれ変わっていく。それは川のごとく自然な流れだ。変化を恐れず、私たちは歩みを進めないといけない

▼22年前の今日、プロレスラーのアントニオ猪木さんが引退試合のスピーチでこんな詩を披露した。<この道を行けばどうなるものか/危ぶむなかれ/危ぶめば道はなし/踏み出せばその一足が道となり/その一足が道となる/迷わず行けよ/行けば分かるさ>

▼ドラマ「テセウスの船」で、鈴木亮平さん演じる警察官の父が、猪木さんのガッツポーズをまねる場面があった。「いーち、にー、さんっ、ダーッ!」。心の中で口ずさみ、コロナブルーを吹き飛ばしたい。

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